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「フォーカスし、削る」に尽きる - MBA生の研究tips(1)

MBAで最後の成果として論文や課題研究などの形でまとまった文章を書く人は少なくないと思います。私は、これまで、MBA生がまとまった文章を書くときに、どのようなテーマであっても、また、どのような研究方法であっても、例外なく言ってきたことがあります。それは、「フォーカスし、削る」に尽きるということです。

MBA生は、実務経験を通じて強い問題意識を持っているので、「言いたいこと」をたくさん抱えて入学して来ます。MBAで学ぶ間にも、勉強熱心な人ほど「言いたいこと」が増えて行きます。それは決して悪いことではないです。

しかし、まとまった文章を人に読ませようとするとき、自分の「言いたいこと」を書くだけでは大抵伝わりません。本当に驚くほど通じないのです。

なぜでしょうか。いろいろな話が出てきて、それがどうつながっているのか理解できない、どういう根拠かがわからないでは、他人の頭にうまくマッピングされないからです。他人の頭は自分の頭ではないのですから!

通常、MBA生の持っている現場の生々しい問題は、たくさんの要素が複雑に絡み合っています。それを他人に通じるようにマッピングするなんて、限られた時間ではとても無理です。

それではどうしたらよいでしょうか。解決策は、思い切って特定の切り口にフォーカスすることです。切り口は、(切れ味のよい刃で切ったものならば)1つで十分だと私は思います。ある切り口、ある視点に固定して論じると、複雑な問題が他の人にも理解できる形で見えてきます。

フォーカスするということは何かを捨てるということですから、自分の言いたいことが十分言えないのではないかと感じる人は多いです。実は逆だと思います。フォーカスすることで、筆者は、初めてものごとの関係性を言語で位置付けることができます。つまり、思考することができるようになるのです。

フォーカスがうまく行くと、今度は、最初の頃に大量に書いた「言いたいこと」の多くはうまく自分の切り口に合わないことに気付くはずです。そうなったら、あきらめてきっぱりと削除するしかありません。苦労して時間をかけてたくさん書いた文章を泣きながらどんどん削除します。そうすると、あら不思議、他人に理解できる文章になってきます。

実は、「フォーカスし、削る」ことの重要性は、日常のレポートでも、MBAではなくて学部学生でも、研究者を目指している大学院生にも共通して言えます。問題意識が強く、勉強熱心な人ほど「言いたいこと」がたくさんできてしまうものです。

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