【要約】モンテ・クリスト伯
舞台は1800年代初期のマルセイユ。船乗りとして優秀なエドモン・ダンテスは、その素直で明るい人柄や技量の高さから船員たちや船主のモレル氏などから厚い人望を得ている人物であり、若くして船長を任せられるなど出世を確約され、婚約相手であるメルセデスとの結婚式を控えるなど、まもなく幸せな生活が手に入ろうとしている描写から物語ははじまった。しかし、彼の幸せの陰で妬みを持つ者、同じ船の乗組員だったダングラールと、メルセデスに好意を抱いていたフェルナンによる陰謀が引き金となり、エドモンは結婚式の最中に囚われの身となってしまう。罪状は、当時の帝政に関することで、勢力の弱まっていたナポレオン派(ポナパルト)として謀反を起こしたというでっちあげられた内容だった。しかし、不運なことに、内容に関しては全く見当違いなものではなく、当然エドモンの友人たちは、何かの間違いだと検事のヴィルフォール氏に救いを懇願するも、彼は自己保身の気持ちから一切対応することはなかった。
エドモンは、自分自身に突然起きた出来事を理解できないまま隔離された監獄へ船で護送され、結果的に14年間を地下の暗闇の獄中で過ごすことになる。人を疑ったりすることのなかったエドモンは、自分に仕向けられた悪事や裏切りに気づくことなく、すぐに出られるものだと思い込んでいた。しかし、長く時が経つにつれて絶望が彼を支配し、自らの死をもって苦しみから逃れようとするなど、極限の精神状態にまで陥ることとなった。数年が経ったある時、死の淵で研ぎ澄まされた感覚により捉えることのできた物音により、自身のほかに幽閉されている囚人の存在に気づき、コンタクトを試みることになる。壁の向こうには、エドモンのいる室に向かって数年にわたり壁を掘り続けていたファリア司祭がいた。その穴を通じて2人は直接顔を合わせることとなり、脱獄に関する綿密な作戦がはじまった。長い年月をかけてその機を伺っている間に、エドモンはファリア司祭から多くの国の言語や、哲学、化学、貴族としてのふるまい方など、多くを学んだことが後の物語に大きく影響している。また、彼がなぜ捕まったのかをファリア司祭が解き、エドモンには復讐心が芽生え始める。幽閉されてから14年が経ち、持病によるファリア司祭の死の機会を利用することにより、エドモンは脱獄することに成功した。
脱獄後のエドモンは、獄中にありながら生前ファリア司祭がずっと気にかけていた、モンテクリスト島に眠っている莫大な資産を受け継ぐことになるが、大きな経済力を得た彼は、囚われていた14年の月日に意味を持たせるように、亡くなった父を最期まで気にかけていた船主のモレル氏が破産寸前になっているところへはウィルモア卿(船乗りシンドバッド)として融資を行い、彼に起こった策略を知りながらそれを止められなかったことを懺悔しながら伝えてくれた友人カドルッスには、ブゾーニ司祭としてお礼をするなど、彼が愛した人たちの困窮に際しては救いの手を差し伸べた。エドモン・ダンテスはすでに故人であると振る舞っていた彼は同時に、彼を陥れたにも関わらず幸福になっている人物たちに対する復讐を計画し、機会を伺っていた。
数年が経ち、彼はモンテクリスト伯爵と名乗る貴族として行動をしていた。多くの言語を話し、化学にも精通し、各国の食や文化を知り、人智が集約されたような知識を持ち、多くの苦しみを経験した者の持つ哲学を持つ彼は、出会う人たちに大きな影響を与える存在になっていた。旅行中に偶然たどり着いたモンテクリスト島で彼の屋敷にておもてなしを受けたフランス貴族のフランツ、彼の友人でありローマの謝肉祭で行動を共にした同じくフランス貴族のアルベール両名ともにモンテクリスト伯から影響を受けた人物であり、ローマで山賊からアルベールの命を救った縁から、モンテクリスト伯はフランス・パリの社交界と関わりを持つところから復讐劇は加速する。
アルベールは、かつての婚約者メルセデスと、その恋敵としてエドモンを陥れた実行犯のひとりフェルナン(今はモルセール伯爵)との間に生まれた子息であり、もうひとりの実行犯ダングラール男爵の娘との結婚が予定されていた。一方フランツは、エドモンの無実の罪を図り通したヴィルフォールの娘との結婚が予定されているなど、復讐の対象との接近が実現することとなる。そして、モンテクリスト伯の行った復讐における策略は多岐にわたっており、様々な人物との関わりの下で、それは実行された。
殺人の罪で捕まっていたカドルッスの囚人時代の仲間であり、かつてヴィルフォール氏とダングラール夫人との間にできた認知されていない息子ベネデットを、偽りのイタリアのカバルカンティ家の令息アンドレアとしてパリに呼び寄せ、モンテクリスト伯に対する盗みを実行したカドルッスの殺害、ダングラール男爵の娘との結婚を企てたのちの破談、またカドルッスに対する殺人罪を問う裁判中にヴィルフォールの息子であることを公の場で告白し、ヴィルフォールを精神的に追い詰めるなど、多くの復讐に用立てられた。
ヴィルフォール氏においては、娘の婚約相手のフランツの父デピネー将軍の死が、彼の父ノワルティエ氏によるものであることを発覚させ結婚は破談、化学に詳しいモンテクリスト伯は薬や毒にも知見があり、かねてより関心のあったヴィルフォール夫人にその知識を与え、ヴィルフォール家内で相次いで起こる不審死を誘発させ、採取的にヴィルフォール氏は狂人となった。
王女のような振る舞いをしながらモンテクリスト伯の奴隷として付いていたエデは、かつて彼女の国の王であった彼女の父に対する罪を犯したモルセール伯爵を議会の場で追い詰めた。公の場で罪が認めた彼はモルセール家の信頼を失墜させることになり、夫人のメルセデスと息子のアルベールが彼から離れていった。ダングラール家との縁談もなくなったことなども影響し、全てを失い精神的に追い込まれたモルセール伯爵:フェルナンは、自害に至ることとなった。
ダングラール男爵においては、株の動向に影響する誤った情報を流すなど経済的な影響を与え、ついに破産した彼の逃亡先であるイタリア・ローマにおいて、モンテクリスト伯に恩のある山賊に彼を捉えさせ、5万フランを残したすべての資産を彼から奪った。結婚も破談になったうえ、娘はこれを機に家出、資産減少の責任を押し付けた夫人とも別れを告げた彼には何も残っておらず、死を考えさせるほど後悔させることができた。
こうして復讐を果たしたモンテクリスト伯:エドモン・ダンテスはその後、モルセール伯爵の未亡人となったかつての恋人メルセデスに対しては、自身の父親が最後まで住んでいたマルセイユの家で暮らさせてやり、別れを告げた。代わりに、奴隷として付かせていたエデを愛し、またモレル家の息子マクシミリヤンを自身の息子であるかのように愛し、マクシミリヤンの願いであった愛するヴァランティーヌ(ヴィルフォール氏の娘)との幸せな生活を実現させるなど、自分の愛する人たちのためにその資産や時間などを使う、過去の復讐心に満ちていた彼からの心情変化の描写で締めくくられる。
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