大仏マニアの女の子

「千マイルブルース」収録作品

大仏様の前で出会った女の子のマニアっぷりは……。

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大仏マニアの女の子

「だいぶ強そうね」
　たしかに後ろからそう聞こえた。
　振り返ると、ロングヘアの女の子が、なぜか顔を赤らめ俺を見つめている。
　俺は訝り、訊いた。
「なにか？」
「……いえ、こっちのことです」
　女の子は恥じらうように、そしてなにかをじっと耐えるようにうつむき、そのまま踵を返し歩き出した。俺は苦笑した。どうせまた、外見で誤解されているのだ。俺は傍らの土産物屋を覗いた。並んでいた商品の手鏡に、うさん臭い男が映っている。ごつい革ジャンの上にのったヒゲ面、サングラス。パンチパーマに剃そりこみのような生え際。たしかに誤解されても仕方がない。じつは強くもなんともないのだが。
　俺は大仏で有名な、鎌倉の高徳院に来ていた。といって、こんなでかい仏像を観たくて来たわけではない。ネットで知り合ったショートヘアの美女と、ここで待ち合わせをしたのである。だが、ドタキャンされた。たぶん物陰からチェックされ、逃げられたのに違いない。
　俺はがっかりし、大仏を見上げて嘆息した。すると、あの、と声がした。