ドロヘダの朝
2009年3月11日~21日 アイルランド紀行7
3月13日曇りときどき雨
Drogheda - Monastarboice - Kells - Donegal①
朝食前に散歩をしようと、雨にぬれそぼるドロヘダの街路へ足を踏み出した。静謐な朝の中、街の中心の時計塔の針だけがよどみなく律義に働き続けている。
かつてボイン川から侵入したバイキングの襲来をたびたび受け、その後はピューリタン革命を成功させたクロムウェルの武力に侵攻されたドロヘダ。その重い歴史は長い年月を経て深い情緒へと変換され、旅人にも親しみやすく美しい街である。
その歴史を見てきた聖ローレンス城門も、街の北端に建つマグダレン塔も、今朝は雨に濡れて重々しさを増していた。
1649年に街はクロムウェルによって占領され、人々は街北部にある教会に逃げ込んだ。クロムウェルは教会ごと焼き打ち、中で多くの人が焼け死んだ。
その聖ピーター・アイルランド教会の敷地に、土地の権力者が「死んでは富も名誉も持っていけない」と自らを戒めたミイラのレリーフの墓石があると言う。訪れてみたが、まだ朝早いせいか門は固く閉ざされていた。
教会の門の貼り紙に本日のバザーの開始時間が書いてあり、手作りクッキーを売るらしい。このようなささやかな人の営みと今日のようなそぼふる雨が、教会の悲しい歴史を少しずつぬぐってきたのだろうか。
この街もアイルランド特有の色とりどりのジョージアンドアが家庭への入り口となっていた。この国の扉がカラフルなのは重い歴史を背負いながらも明るく生きようとする人々の生活の知恵なのかもしれない。
出勤ラッシュが始まり、街中が撮影しにくくなってきたため、ホテルに戻って朝食をとることにした。今日は念願のモナスターボイスに行くので、早く出発したい気持ちもあった。
The D Hotelのレストランは川が見渡せる気持ちのよいスペースで、はす向かいにドロヘダの波止場も見えて趣きがある。
そしてここで食べるフルアイリッシュブレックファーストは素晴らしかった!ホテルの部屋もだが、料理もまたスタイリッシュだったのだ。
アイルランド滞在中、私はアイリッシュブレックファーストを毎朝食べ続けた。アイリッシュブレックファーストには一言、二言では終わらないくらいの愛着と情熱があるのだ。それは後日詳しくまとめることにする。
※この旅行記は以前に閉じたブログの記事に加筆して、2023年3月noteに書き写しています。
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