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凍ったハート
2009年3月11日~21日 アイルランド紀行15
3月15日 曇りときどき晴れ
Cong - Conemara - Galway②
コングの静かな朝を離れ、コネマラ地方へ進路を取る。
入国時にイミグレーションのおじさんにどこらへんをまわるのだと聞かれ、口をついて出たのがコネマラだった。
(実は現地に着くまで「コネマラ」でなく、「コマネラ」と思っていた。かつてオリンピック女子体操で10点満点を叩きだしたコマネチっぽい地名と記憶していたからだ。(古い!))
アイルランドは州がかわると、風景がガラリと変化する。
コネマラ地方に入ると、大地は枯れ、むきだしのはげ山がいくつも顔をだす。その間を縫うように一本道の道路がコネマラ半島の奥へと導いている。
道すがら、エニシダの黄色い花が荒涼とした風景に色どりを添えていた。
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アイルランドは日本と同じ左側通行で、コネマラに向かう道は後ろから追い上げてくる車も対向車もほとんどない。「これくらいの道は運転できるよ、きっと。」と、私はひさしぶりにハンドルを握った。
昔から運転センスがないので、ふだん私の運転免許証は身分証明書の役割しか果たしていない。アイルランドの田舎だったら安全に運転できるだろうと国際免許証を取得して持参した。だが車が左に寄ってしまいがちで、エニシダの灌木が窓にあたり、舗装された道路から落ちそうになった。ついに助手席の夫が「怖い」と音をあげ、あっさりと運転交代、ナビゲーターに徹することとなった。
10数キロ行った頃だろうか、静かに水をたたえた湖の向こうにカイルモア修道院が姿を現した。
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イギリスの富豪ミッシェル・ヘンリーが愛妻のために建てた城。妻や子供たちに次々と先立たれた彼はここを売却し、その後、修道院になった。
現在、その一部が観光客のために開放され、当時のきらびやかな食卓や室内が内覧できる。
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湖畔に佇む古城の姿はアイルランド西部で最も美しい景観の一つと謳われている。
確かに美しい……が、あまり心ときめく場所ではなかった。
冷たい感じがするのだ。整いすぎているからだろうか。湖面が静かすぎるからだろうか。何かが凍てついて閉ざされ、死んでしまったような冷たさを感じる。妻子に先立たれたヘンリー氏のハートの投影なのだろうか。
墓地に佇むケルト・クロスの方がよほど息づいてるように感じられた。
※この旅行記は以前に閉じたブログの記事に加筆して、2023年春にnoteに書き写してます。
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