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保全手続による債権回収

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日は、債権回収には事前の対応が必要であると言いましたが、私たち弁護士の元に相談に来られる方は、事前対応策を取っていない場合も結構あります。

 そういうときには、まず、相手方に内容証明郵便を出して債権回収を図ろうとするのですが、それだけでさっさと支払いをしてもらえることは滅多にありません。

 支払わないことに言い分がある相手方であれば、相手方自身も弁護士に依頼して弁護士名で回答書が来ることもありますし、ただお金がなくて払えない場合には、完全に無視されることも少なくありません。

 その場合には、やむなく裁判を提起することになります。

 弁護士がついた場合には、相手方の財産を隠されたりするおそれはまずないと言って良いのですが、弁護士がつかない場合には、相手方が財産を隠したり処分したりしてしまうおそれがないとは言えませんので、それに備えて仮差押え等の保全処分をとることを検討します(ただし、弁護士が付いていても仮差押えをしてくる弁護士もいますので、弁護士をつければ安全、ということでもありません)。

保全手続の種類

 保全手続は、債権を保全するために取る裁判上の手続きです。

 大きくわけて、仮差押え、係争物に関する仮処分、仮の地位を定める仮処分の3種類があります。

 貸金や未払金の支払いなどの金銭債権を保全するために債務者の様々な財産を保全する手続は、「仮差押え」です。

 不動産に関する登記手続を請求しようとしている時に、当該不動産の所有権が移転されるのを予防するために取られるのは「係争物に関する仮処分」です。

 また、労働者が解雇の有効性を争う時に、最終決着が付くまでの間も給料の支払いを受けたい場合には、仮に労働契約関係があることを認めてもらう、仮地位仮処分を申し立てることがありますが、これが「仮の地位を定める仮処分」です。

保全手続で解決することもある

 保全手続は、本来は財産を保全しておいて、後は本裁判で債権の有無を確定して強制執行をするための準備手続ですが、実は、この保全処分の段階で解決することも少なくありません。

 というのも、債務者は、財産を押さえられてしまえば、身動きが取れなくなって、取引先の信用を得られなくなったり、時には破産の危機に瀕することもあるため、早期に解決をしようと動いてくることがあるからです。

 それまでは歩み寄りの姿勢を全く見せなかったのに、仮差押えをした途端、和解の提案をしてくることがあるのです。

 保全手続を取るには、担保金として押さえる財産の価格の約2~3割を予め収めなくてはならないため、債権者には負担になるのですが、早期に和解をして担保金を取り戻すこともできますから、資金に余裕がある場合は、保全手続を検討してもよいと思います。

迅速で適格な判断を

 とはいえ、保全処分、特に仮差押えは、債務者にとってはインパクトの強い手続です。

 したがって、保全処分を取ることによって債務者の息の根を止めてしまうのではないか、ということをよく検討してから手続に進むことが必要です。

 反面、早く保全しておかないと、回収するべき財産が無くなってしまう危険性もあります。

 保全手続をとるかどうかは、迅速かつ適格に判断することが肝要です。

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