有期労働契約者の解雇
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
昨夜、「ハツゴメ」を見終えました。
なんだかいつもテレビドラマばかり見ていますが、最近は登場人物の恋愛関係にはちっとも関心がなく、人材育成という観点でばかり見てしまいます。
先日見終わったTokyo MERもハコヅメも、新人を育てる職場環境がすごい。
私ならここでキレるな、とか、こんなにうまく教えられないな、とか、こんなに辛抱強く見守れないな、とか・・・いろんなことを思いながら見ています。
現実には、ドラマのようにうまくいかないことの方が多くて、育てる方も育てられる方も試練の連続ですけどね・・・
どうやっても育たない従業員は、その原因のいくつかが育てる方にあるのだとしても、この会社でやっていくことは難しいでしょうから、辞めてもらうしかないこともあります。
では、有期労働契約の従業員について、期間途中で辞めてもらうことはできるのでしょうか。
労働契約法の定め
労働契約法17条1項は、有期労働契約の解雇について以下のように定めています。
(契約期間中の解雇等)
第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
・・・
民法だと、雇用の期間の定めがあっても、「やむを得ない事由があるとき」は、各当事者は、「直ちに」契約の解除をすることができる、と規定されています(民法628条)。
労働契約法は、やむを得ない事由がなければ解雇できないというルールが、使用者側が守らなければならない強行規定であることを明示した上で、そのやむを得ない事由があることを使用者が主張立証しなければならないことを明らかにしました。
使用者は、やむを得ない事由があることを立証すれば、「直ちに」労働者を解雇することができることについては、民法の規定がそのまま適用されます。
そして、やむを得ない事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときに相手方に対して損害賠償の責任を負うことについても、民法のルールがそのまま適用されます。
やむを得ない事由とは
「やむを得ない事由」に該当するかどうかは、期間の定めのない労働契約における解雇の時よりも厳格に判断されるべきと言われています。
そもそも期間の定めのある労働契約においては、その定められた期間中は雇用が約束されているはずで、そのような雇用の約束にもかかわらず、期間満了まで待たずにどうしても今解雇しなければならない特別の重大な事由が必要なのです。
解雇が無効になったら?
ですから、有期労働契約の期間途中に解雇したものの、その解雇が特別の重大なやむを得ない事由に基づいていなかったとして無効になることはあり得ます。
しかし、解雇の有効性を争うことになれば、その結論が出るまで少々時間がかかります。
そのため、解雇が無効だったことが確定した時点で、すでに有期労働契約の期間が終わっていた、ということがありえます。
このようなケースでは、裁判例もいろいろです。
解雇が無効だとしても既に雇用契約期間はないとして、雇用関係は認めずに残期間分の賃金の請求だけを認めた裁判例がある一方で、雇止め制限法理を適用して、解雇の意思表示に含まれる雇止めの意思表示には正当な理由がないとして、従業員の地位確認を認めた裁判例もあります。
この後者の裁判例の理屈だと、期間満了後に従業員の地位があるかどうかは、雇止め制限法理が適用されるための要件を満たしているかどうかによることになるので、当該有期労働契約の状況次第だということができます。
有期労働契約者でも解雇は難しい
結局、有期労働契約者を期間途中で解雇することは難しいということが言えますし、期間が満了すれば必ず契約を終了させることができるかとというと、雇止め制限法理が適用されるので、それも結構難しいのです。
やはり、従業員はうまく育てることが大切、ということでしょうね。
ドラマに出てくるような理想の上司・理想の職場環境を目指して、がんばりましょう。
それでもどうしても会社を辞めてもらわなければならない従業員については、手順を間違えないよう、できるだけ早い段階で法律の専門家に相談しておくことをお勧めします。