高熱の出た従業員に対する休業手当
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
昨日の大阪の感染者数は666人で、過去最多でした。
経済活動が普通に行われているので、去年の緊急事態宣言中のような緊張感が全くありませんが、もはや、いつ自分や身の回りの人が感染してもおかしくない状況です。
このような世の情勢において、従業員から「高熱が出ています」と言われた時、使用者はどのように対応すればいいのでしょうか。
会社を休ませたら休業手当を支払わなければならないのでしょうか。
休業手当の支払義務
労働基準法は、休業中の手当について、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めています(26条)。
休業手当を支払わなければならないのは、「使用者の責に帰すべき事由による」場合ですので、そうでない場合には休業手当を支払う必要はありません。
そして、「使用者の責に帰すべき事由」とは、
① 使用者の故意・過失または信義則上これと同視すべきものよりは広く、
② 不可抗力によるものは含まれない
と解釈されています(厚生労働省労働基準局)。
では、発熱している従業員を休ませることは、「使用者の責に帰すべき事由」ではない、と言っていいのでしょうか。
不可抗力の中身
使用者が休業手当の支払義務を負わない「不可抗力」の場合とは、具体的にはどのような場合でしょうか。
休業手当の支払義務がない「不可抗力」であるというためには、
① その原因が事業の外部による発生した事故であり、
かつ、
② 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故であること
が必要です。
よくある例としては、地震や台風が原因で一時的に事業を遂行することができないような場合です。
コロナを理由とする休業
コロナウィルス感染症について、使用者が注意すべき点については、厚生労働省のホームページに詳しい解説が載っていますので、是非参考になさってください(厚労省ホームページ『新型コロナウィルス感染症に関するQ&A(企業の方向け)』)。
ここには、以下のような説明が載っています。
労働者がコロナウィルスに感染して、都道府県知事が行う就業制限によって当該労働者を休業させざるを得ない時は、不可抗力であって「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しません。
ただし、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、『使用者の責に帰すべき事由による休業』に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります」とも記載されていますので、注意が必要です。
新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に病期休暇制度などを利用してもらうことになります。
会社の判断で、発熱の症状のある労働者に休んでもらう場合には、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
今やるべきこと
このように、発熱が見られるだけで感染症の検査結果が出ていない段階で、会社の判断で休ませる場合には、会社は休業手当を支払わなければならないことになります。
しかし、休業手当を支払いたくないという理由で従業員を自由に出社させることは、後にコロナウィルス感染が確認された際に、もっと大きなトラブルを招くことになります。
今のご時世、発熱症状のある従業員がいれば、早期にPCR検査を受けさせ、検査結果が出るまで自宅で待機させることを選択して欲しいものです。
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