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遅刻と残業の相殺
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
寒い日は、なかなか布団から出られないですね。
朝の通勤時間に地下鉄の駅に行くと、電車が到着して扉が開いた瞬間にダッシュで駆けていく人がいて、「あぁ寝坊したんだねぇ」と目を細めて眺めてしまいます。
あと5分だけでも早く起きていれば走らなくて済んだかもしれないのに・・・
従業員が遅刻すると、その分、するべきだった仕事ができないので、残業でカバーすることになるかもしれません。
その際、使用者が、従業員の遅刻した分の時間と残業の時間を相殺して労働時間を計算することは可能なのでしょうか。
結論としては、可能!です。
労働基準法32条には、1日の法定労働時間は8時間であると規定されています。
そして、その時間は、実際に労働した時間です。
つまり、実際に使用者の支配下で働いた時間です。
ですから、遅刻や早退によって働いていない時間があれば、それは労働時間には含まれません。勤務中に私用のために外出する時間も、使用者の支配下から脱しているといえますので、実労働時間には含まれません。
実際に働いた時間が労働時間としてカウントされますので、遅刻した時間は労働時間には含まれず、その遅刻した時間分を残業したとしても、法定労働時間の8時間以内に収まっていれば、労働基準法違反にはなりません。
また、所定労働時間が1日7時間に設定されている場合には、遅刻と残業を相殺した後に7時間以内に収まっていれば、時間外労働をしたことにはなりません。
30分遅刻して1時間残業した場合には、30分だけが時間外労働をしたことになり、その分の割増賃金を支払う必要があります。
とはいえ、その日ごとに相殺計算をするのはかえって面倒かもしれませんので、遅刻は遅刻としてその分賃金から差し引き、残業は残業として残業代を支払うこととしている会社が多いかもしれませんね。
いずれの方法を取るとしても、法定労働時間の範囲内であれば違法になることはなく、また所定労働時間の範囲内であれば残業手当を支払う必要はありません。
しかし、遅刻が繰り返されるような場合には、そもそも、その背景にどのような原因があるのかに注意を払っておくことが大切です。職場に何らかの問題があって気持ちが出勤に後ろ向きになっているかもしれません。
それを放置していると、うつ病を発症したり、取り返しのつかない結果をもたらしたりすることもありえます。