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人権デューディリジェンス
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
夕べはひさしぶりに夢をみました。
すごく忙しくてやることが沢山あるのに、「暇そうだね~」と言って世間話をしにきた人に、自分がどれだけ忙しいかを説明している夢でした。
人の事情って外から見ただけではわからないんですよね。
町中を歩いている時も、どの人も何の問題も抱えていないように見えて、実はいろんな問題を抱えているかもしれないし、今から大きな問題に直面することになる人がいるのかもしれないんです。
そんなことを想像していると、「そういう私だって、今この瞬間はなんとかなっているけど、次の瞬間に大きなトラブルを抱えることになる可能性はあるな」と思えてきて、一瞬一瞬を用心深く過ごさなくては!と思えてきます。
従業員も仕事中の様子に問題がないように見えたのに、実は大きなトラブルを抱えているということはあります。
経営者としては、そのようなトラブルを全部もれなく把握して対処していくことは難しいかもしれません。
しかし、会社の中で行われている人権侵害は絶対に阻止しなければなりませんし、会社のサプライチェーンの中に存在しうる人権侵害についても責任をもって対処することが求められています。
ビジネスと人権に関する指導原則
そのような人権への配慮を求める国際的指針は、2011年に国連が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)です。
この指導原則を受け、日本では、2020年10月に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」が策定されました。
この計画では、今後政府が取り組む各種施策や企業活動における人権デュー・ディリジェンスの導入・促進への期待が表明されています。
指導原則の3つの柱は、
人権を保護する国家の義務
人権を尊重する企業の責任
救済へのアクセスの確保
から構成されています。
企業にとって重要なのは、もちろん2つ目の「人権を尊重する企業の責任」です。
企業には、その事業活動及びサプライチェーンにおいて人権を尊重する責任があり、「人権デューディリジェンス」を実施することを求めています。
人権デューディリジェンスとは
「人権デューディリジェンス」とは、「企業の事業活動に伴い顕在化する(または潜在的な)人権への負の影響(人権リスク)を特定し、そのリスクを軽減または防止するために、研修や社内環境の整備、サプライチェーンの管理などの対応策を実施し、フォローアップを行っていくプロセス」のことです。
つまり、人権を尊重するためのPDCAを回して改善していく、ということです。
Planを設定するためには、まずは事業活動に伴い顕在化する(または潜在的な)人権への負の影響(人権リスク)を特定することが必要なのですが、実はこの作業が最も難しいプロセスです。
自分の抱える問題を自分自身で客観的に把握することは難しいですもんね。
ですから、社内の従業員や取引先に対してアンケートを実施するなどして、問題点の把握に努めることが必要です。
ステークホルダーは人権侵害に敏感
人権デューディリジェンスなんて事業活動に関係ない、と思っている経営者がいたら要注意です。
従業員の人権が侵害された状況は、従業員の離職率を高め、生産性の低下を招きます。
優秀な人材が入社してくれる確率も下がります。
調達先の人権侵害を放置していると、不買運動にもつながる危険があります。
世間のステークホルダーは、企業自身が思っているより人権侵害に敏感に反応します。
細心の注意を払って、人権尊重への取組みを進めるようにしましょう。