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産前産後の休業

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 先日、1歳ちょっとの子供をあやしながらの若いお母さんと、Webで話をしました。話している間に寝てしまったお子さんの姿は天使そのもので、抱っこしたくてたまらなくなりました。こういうとき、Webだとすごくもどかしいですね・・・

 しかし、産まれてしまえばこんなにかわいい赤ん坊も、産むのはとっても大変です。

 そこで、今日は、妊産婦にどのような保護を与えなければならないのか、について説明します。

 なお、2021年1月3日の記事「従業員が妊娠したら」も、併せてご覧ください。

休業期間

 労働基準法は、産前産後の休業について、以下のように定めています。

 (産前産後)
第65条 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 私自身の経験や、周りの働く女性の様子からすれば、予定日直前よりも、むしろ妊娠6か月くらいまでの方が悪阻や切迫流産・早産の危険が高く、休ませてあげることが必要なのではないか、と思うのですが、法律は予定日における出産を念頭に母子の保護を図っているようです。

 産前は、本人が請求をした場合にのみ休業をさせる義務が生じますが、産後は、本人からの請求があろうがなかろうが、原則として8週間を経過しない女性を働かせてはならないことになっています。

 産前の休業は、予定日を基準にして計算します。
 自然分娩の場合は、必ず予定日に出産するとは限りませんので、産前休業は6週間よりも長くなったり短くなったりする可能性があります。

 産休に入った翌日に出産したというような場合は、実質的な産前休業は1日だったということになりますが、それでも、予定日の6週間前に産前休業に入っていなければ、仕事中に出産していたということですから、産前休業の意義は十分あったことになります。

 産後の休業期間は、予定日ではなく実際の出産日を基準に数えます。

 出産日当日は産前の休業期間に入りますので、産後休業期間は、出産日の翌日を1日目として数えます。

「出産」の意味

 出産には、妊娠4か月以降の流産、早産、および人工妊娠中絶も含まれます。

 また、死産も含まれます。

 どういう状態であれ「出産」には大量出血を伴い、またホルモンのバランスも大きく変わりますので、母体の健康のために産後の休業は必須です。

休業中の賃金

 産前産後休業中は、就業規則等に有給とする旨の定めがない限り無給です。

 ただし、健康保険により、産前は42日(多胎妊娠の場合は98日)まで、産後は56日まで、休業期間1日あたり標準報酬日額の3分の2に相当する額の出産手当金が支給されます。

不利益取扱いの禁止

 産前産後の休業期間とその後30日間は、その女性労働者を解雇することが禁じられています(労働基準法19条1項)。

 また、有給休暇の取得要件を判断する基礎としての労働日数には、産前産後休業期間の日数も含めて計算されます。

 さらに、男女雇用機会均等法は、産前産後休業およびその請求をしたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁止しています(男女雇用機会均等法9条3項)。

 ですから、不合理な不利益取扱いがあった場合は、その行為自体が無効になると共に、損害賠償請求の対象ともなります。

 なお、賞与を算定する際に育休期間の日数を除外することが、“不利益取扱い”になるかどうかについて書いた先日のnote「育休をとったら賞与は減らされるのか」で紹介した裁判例「学校法人東朋学園事件」は、男女雇用機会均等法で不利益取扱いが明文上禁止される前の判決でしたが、産前産後休業期間等を欠勤日数に含めて算出した出勤率が90パーセント未満の場合には一切賞与を支給しないこととする就業規則の定めは、公序良俗に違反するものであって無効だ、としました。

 この判決の後の法改正で不利益取扱い禁止規定が制定されましたので、それ以降は、不合理な不利益取扱いがあれば、法律に違反するものとして無効かつ損害賠償請求の対象となることが明確になりました。

優秀な人材の囲い込み

 少し前までは、女性従業員が産休育休を取りながら仕事を続けることが結構難しい職場が多かったと思います。

 しかし、時代は変わり、様々な状況にある全ての従業員が、それぞれの抱える問題を克服しながら働くことのできる職場づくりが強く求められるようになってきました。

 この時代の流れに乗っておかないと、本当に優秀な人材を失ってしまうことになります。

 子供を持つ女性の強さは、特に侮れないものです。

 そんな女性たちが末永く力を発揮できるような職場にしましょう。

 

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