時間外労働の過少申告
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
長時間労働を減らそうという法律や社会の長れに逆らうように、長い時間働き続けることを当然のように捉えている労働者もいます。
与えられた仕事を絶対に高クオリティに終わらせることを使命としている真面目な従業員ほど、労働時間は長くなります。
そして、会社が長時間労働に対して敏感になり、労働時間管理を厳しくしていくと、今度は、会社に内緒で残業をするようになります。
中には、家に帰っても居場所がないとか、1人暮らしだからわざわざ帰宅するのが億劫、なんていう不純な理由で、終業時刻以後も会社に居残っている労働者もいます。
こういう不純な理由の場合は、ますます会社に残業を申告しにくいですよね・・・
基本的に、残業は、会社の指示によるものでなければ認められないので、会社のあずかり知らぬところで勝手にされている残業については、割増賃金を支払う必要はありません。
しかし、会社の敷地内、建物内に業務時間を超えて居残って仕事をする場合は、電気代等を勝手に使用していることになりますし、万が一事故に巻き込まれた時には、勝手に居残っていたとはいえ、会社は労働者が被った損害について責任を問われることになりかねません。
また、労働時間が長時間に及ぶことで心身に不調を来してしまうこともありますが、それも、通常の時間内の労働と相まって、管理不十分として会社がその責任を追及される危険性はあります。
したがって、会社としては、従業員が勝手に残業できないような体制を整備することが必要です。
そして、万が一、会社に隠れて勝手に残業をしていることが発覚した場合には、しかるべき処分を検討しなければなりません。
もちろん、残業をするに至った理由は、人や場合によって様々でしょうから、勝手に残業したことに対して、何が何でも一律に処分の対象とすることは望ましくありません。
通常業務の時間内に終わることのできないほどの業務量になっているのではないか、上司・同僚・部下から必要な協力を得られていないのではないか、精神的に追い詰められていて仕事の効率が落ちているのではないか、など、ただ単に表面的な労働時間の長短だけでなく、働く環境にも目を向けてみる必要があります。
その上で、処分に値すると評価できるときにのみ、残業の時間の長さや頻度、理由などに照らして、相当な処分を下すことが求められます。
いずれにしても、勤務時間は正確に申告することと、残業は上長の指示または許可の下で行うことをしっかりとルールづけ、ダラダラとした残業をしてはならないことを従業員に理解して実践させることが大切です。