見出し画像

労働時間の特例措置

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 先日宝塚大劇場でなんとか千秋楽を終えた月組公演は、「今夜、ロマンス劇場で」でした。
 映画から出てきた姫と映画を愛する青年のロマンスです。
 綾瀬はるかさん主演の映画を元にした公演で、白黒の世界をどうやって舞台で表現するのかな?と思っていましたが、すごくステキな舞台作品になっていて感動しました。
 2月末からは東京宝塚劇場で公演される予定なので、是非たくさんの方に見ていただきたいです(無事に開演されますように・・・)。

 この作品では、映画の撮影村が舞台になっていましたが、撮影現場の過酷な労働環境が垣間見えていました。
 芸術作品を作り出すというのは、時間とか労働とかいう概念を取っ払った上でないと難しいのかもしれませんね。

 先日、テレビ番組の収録をしたのですが、芸術とは無関係な番組の制作にもかかわらず、結構な時間がかかりました。
 映画の撮影ともなると細部へのこだわりも強く、膨大な時間がかかるんだろうと容易に想像できました。

 とはいえ、映画の製作も労働基準法上の労働時間の規制を受けますから、撮影現場で働く人たちの労働時間管理は必須です。

労働時間規制

 労働基準法上、労働時間は、原則として週40時間まで、かつ1日8時間までとされています(労働基準法32条)。

 これを法定労働時間といいます。

 法律で定められた労働時間ですので、この法定労働時間を超えて労働させてはなりません。

 法定労働時間を超えて労働して欲しいときは、三六協定を締結しておく必要があります。
 そして、実際に、三六協定に従って法定労働時間を超えた労働をさせたときには、割増賃金を支払う必要があります。

 実際には、会社が独自に就業規則で労働時間を決めますが(会社が決めた労働時間を「所定労働時間」といいます)、所定労働時間は法定労働時間の範囲内でなければなりません。
 法定労働時間を超えて所定労働時間を設定した場合は、法定労働時間を超えた部分は自動的に無効となり、法定労働時間に短縮した労働時間が所定労働時間となります(労働基準法13条)。

特例措置

 この法定労働時間については、特例措置があります。

 つまり、以下の商業・サービス業のうち、常時10人未満の労働者を使用する小規模なものについては、週44時間、1日8時間まで労働させることができることとされています(労働基準法施行規則25条の2第1項)。

 ① 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
 ② 映画の映写、演劇その他興行の事業
 ③ 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
 ④ 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業

 ここでは、「~の事業」と書かれていますが、労働基準法上、事業は事業場単位で判断されます。ですから、例えば、他店舗展開をしている会社は、全社の労働者の数で判断するのではなく、各店舗ごとの人数で判断されることになります。
 そして、1つの事業かどうかは場所的観念によって決定されますので、同一の場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とすることとされています(昭22・9・13発基第17号)。
 ただし、同一の場所にあっても、労働の態様が著しく異なる場合には、別事業場とされます。

 なお、この特例措置に、映画の製作は含まれません。

 常時10人未満の労働者に労働してもらう事業場では人員配置に苦慮することが多く、また、特にここに挙げられた商業・サービス業は労働集約型であるため、どうしても労働時間を若干でも延ばす必要があった、ということでしょう。

 ただし、法定労働時間が40時間だろうが44時間だろうが、労働時間の管理を適切に行い、過酷な労働を強いることのないよう注意しなければならないことは当然です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?