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整理解雇が認められるための4つの要件

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 昨日もよく雨が降りましたね。
 今日が雨なら良かったのに、今日は良く晴れそうです。

 さて、会社の経営にも晴れの日と雨の日があり、雨が続くと人員削減もやむなしというところまで来てしまうことがあります。

 とはいえ、今いる従業員をそう簡単に解雇することはできません。
 なぜなら、日本の法律には解雇権濫用法理というのがあり、労働契約法上も明確に、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)と定められていて、この法理は整理解雇の場合にも適用されるからです。

整理解雇法理

 「整理解雇」とは、従業員本人の問題ではなく、会社の経営状態が悪化したことを理由とする解雇です。

 従業員側に落ち度があるわけではないので、普通解雇や懲戒解雇よりもより厳しい基準でしか解雇が認められない傾向にあります。

 つまり、裁判例は、整理解雇が認められるには、以下の4つの要件が必要であるとしてきました。

 ① 人員削減の必要性があること
 ② 解雇回避努力をしたこと
 ③ 人選が合理的であること
 ④ 手続きが妥当であること

 昭和54年10月29日に出された東京高等裁判所の判決(東洋酸素事件)では、この①から④を並列的に見るのではなく、①から③の要件で整理解雇の客観的で合理的な理由があるかどうかを検討した上で、客観的合理的な理由がある場合でも、手続きが妥当でなければ(つまり④の要件が欠けていれば)整理解雇は無効であるとしました。

「4要件」から「4要素」へ

 4つの「要件」を必要とする判断基準だと、全ての要件を満たさなければならないことになります。

 しかし、厳密に4つの要件を検討するのではなく、解雇権の濫用かどうかを柔軟に判断するための要素としてこれらの4つの視点を取り入れるべきとする裁判例も出てきました。

 「要件」ではなく「要素」とすることで、少しは柔軟に会社側の事情に応じた対処ができるようにするためです。

 最近の考え方は、判例も学説も「4要素」で判断するべき、という流れになってきてはいますが、「要件」としても「要素」としても、この4つのうちの1つが欠ければ解雇権の濫用と認定されることになるでしょうから、結果に違いはあまりありません。

①人員削減の必要性

 最初の要素である「①人員削減の必要性」は、人員を削減しなければ倒産する、というほどの必要性までは要求されません。

 会社が経営の戦略的合理化を目的としてする人員削減についても、裁判所は、会社の判断を尊重する傾向にあり、認められています。

②解雇回避努力

 日本では、希望退職者の募集によって人員削減を実現してきました。
 したがって、整理解雇に先だって、まずは希望退職者の募集をしたかどうかが重視されます。

③人選の合理性

 誰をリストラの対象とするかについては、合理的な選別基準によって決められる必要があります。

 つまり、社会的差別の有無、勤務成績、勤続期間、労働者の生活状況などの客観的で適正な基準で人選することが必要です。

④手続きの妥当性

 必ずしも労働組合との協議が必要なわけではなく、労働者に個別に説明して協議を重ねるなどすれば、手続きの妥当性は確保されます。


 整理解雇については、会社の経営状況や従業員の個別の状況などによって、その有効性が左右される可能性があります。
 万が一、会社の経営状態が悪くなったとしても、いきなり解雇通告を行うのではなく、事情を説明してできるだけ従業員側の納得を得られるように努力するようにしましょう。

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