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始末書の書かせ方

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 最近では、すっかりメールやLINEでやりとりをすることが多くなりましたが、時々手書きの手紙や葉書をいただくととても嬉しい気持ちになります。

 宝塚歌劇団の贔屓への連絡手段も基本的にはお手紙だけなので、いろいろなレターセットを選ぶのも楽しい時間です。自分の名前入りの便せんと封筒を作ってみたりすると、ますます楽しくなります。

 さて、今日は、そんな楽しいお手紙ではなく、「始末書」についてです。

従業員に始末書を書かせる時に注意するべき点

 従業員が、何らかの非違行為をした際に、始末書をとることがあると思います。

 将来的にその従業員を解雇しなければならなくなったとき、この始末書は、解雇の理由を基礎づける重要な証拠となります。

 そんな重要な証拠であるにもかかわらず、始末書を書かせる時点では、その内容について吟味されていないことも少なくありません。

 解雇の有効性が争われて訴訟になった場合、解雇には理由があることを示す証拠の1つとして始末書を提出することがあるのですが、そもそもどのような行為に対する始末書なのか、責任の所在はどこにあるのかなどが不明な始末書だと、解雇の有効性を基礎づけることが難しいです。

 無理矢理書かされたもので、自分の意思ではありません、という主張をされることもあります。

 したがって、始末書を取るその時点において、将来の訴訟の可能性を念頭においた内容と方法で行うことがとても大切です。

 つまり、内容については、①いつ、②どこで、③誰が、④何を、⑤なぜ、⑥どのようにした、という「5W1H」(When, Where, Who, What, Why, How)を意識して書いてもらうことが必要です。さらに、始末書の場合は、そのことについて責任の所在がどこにあり、当該従業員が反省しているかどうか、今後再発防止に向けてどのように対処していくつもりなのか、というところまで踏み込んで書かれていることが求められます。

 しかし、このような内容を理路整然と書くことのできる従業員は多くありません。現実に起こった出来事を端的に誤解のない明確な文章にすることは、毎日文章を作成している我々弁護士のような者にとってもなかなかできることではないのです。しかも、自分の責任を問われる可能性のある内容を明確に書ききることには心理的な困難も伴います。

 そこで、会社によっては、始末書の内容を会社側で作成して、当該従業員には署名捺印させるだけ、というやり方をしているところもあります。

 その方法だと会社の思惑どおりの内容にはなりますが、今度は、思ってもいないことを会社に無理矢理書かされた、という主張をされる可能性が出てきます。

 何度も書き直しをさせた時も同様に、会社の指示する内容になるまで書き直させられたんだから自分の意思で作成したものではない、と言われることにもなりかねません。

 どうしても意味の通じる始末書が出てこない場合には、Q&A方式で回答させたものを始末書として保管しておくのも1つだと思います。
 その際には、漏れのないQを準備しておくことは必要ですね。

始末書の提出を拒む従業員の対処法

 始末書の提出を拒否されたとしても、会社はその提出を強制することはできません。

 始末書は、事実関係だけでなく、謝罪や反省の弁も含んだものです。

 謝罪や反省は自由意思に基づくものですから、謝罪も反省もしていない人に対して強制的にそれをさせることはできません。

 しかし、会社としては、従業員に非違行為の事実があったことを記録に残しておくべきです。

 非違行為をしながら謝罪も反省もしない方が問題だとも言えますので、事実の存在だけでも本人に認めさせることは有効です。

 そこで、始末書の提出を拒否する従業員に対しては、謝罪や反省の弁や再発防止についての記載のない、単なる事実関係を記載した「顛末書」の提出を命じても良いでしょう。

 顛末書であれば、事実関係の報告だけですから、個人の意思の自由とは関係ありません。したがって、事実調査の一貫として、顛末書の提出を命じることはできると考えられます。

訴訟になっても大丈夫?

 必ずしも全ての問題が訴訟になるとは限りません。

 しかし、いざ訴訟になってから証拠を作ることは不可能です。

 日頃から、訴訟になっても大丈夫といえる備えをしておくことが大切です。

 常に、訴訟になっても大丈夫かなという視点で書類を作成しておかれることを強くお勧めします。




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