横濱屋_茅ヶ崎

横濱屋_茅ヶ崎

最近の記事

若者の

「アオキさん、便意が来たら教えてくださいね」 そう言いながら看護師さんが手に持つ蓋付きのチリトリのようなもの。まさかと思った。 20代の終わり頃、僕は車に撥ね飛ばされて入院中だった。 その事故で太腿の骨がパッキリ2つに折れて、病院のベッドにくくりつけられたほぼ身動きできない状態の僕にその看護師さんは言った。 聞くと、寝たきりの僕のお尻の下にチリトリを差し込んでそこに用を足すのを手伝ってくれると言うのだ。 今なら枯れた世代に成り果てたので「そうですか、ウチの子をどうぞよろしく

    • カレースパ

      深夜のカレースパ。 レトルトカレーに茹でたスパゲッティを和えるだけ。俺のスペシャリテ。 シャウエッセンも一緒に茹でてタバスコをザシュザシュザシュと振りかけると、気分はもう。 44歳が満足した結果、泥酔と胃もたれ。 もし10代に戻ったら柔道で金メダル取って、その後南極観測隊に入ろうと浅く甘い考えに頭が一杯になる。 明日の朝起きたら、12歳の俺だ。

      • 6畳1K リボ払い 100円の文庫

        憧れの土地、東京 中央線。 21歳の僕は中央線沿いに行けば、己に秘める何かが見つかるだろうと、無計画に中央線荻窪駅北口に住みはじめた。 音楽が好き、漫画が好き、酒が好き、東京に行けば好きなものに囲まれて生きていけるのだろうと考えていた21歳の僕は今の僕と変わらずやはり甘かった。 生活苦。服の上からチクチクと細い針を刺してアザを広げるリボ払い。リボ払い! 漫画もろくに買えず、ライブも半年に1回行けるか、服はいつも同じ、中学生の時に買ったアロハシャツとお店支給のコックコート。

        • 20240718

          居間用の安物のソファが届く。 作ってもらったナメコと豚肉の汁をツマミに晩酌。 今日も酒は美味い。

          弟子と師匠

          東京に行き職探しをする時、なぜ飲食を選んだのか覚えていない。手に職も無かったし賄いがつくとかそんな理由だったと思う。 唯一採用されたレストランの上司が変な人だった。 三重県出身でローリングストーンズが好きなウェーブ髪で白いコックコートのシェフ。「おめーくらわすぞ」が口癖のいかつい志摩弁の僕の師匠。 僕は何々料理とか、そこを突き詰めた技術の仕事はした事がない。 その店もファミレス的に色んな料理を出す店だった。 和食の修行後、イタリア料理の勉強をしてた師匠は罵りながら僕に基本

          僕の相棒

          長年、親身になって支えてくれた前歯の差し歯が取れた。 僕を見捨て、支えるのを放棄したのは鶏の骨が原因だった。 支えてもらっていた側の僕の好物、手羽先の唐揚げをムシャムシャ食べていたら、手羽先の骨が運悪く彼にヒットしてしまった。 グラグラグラグラ、その日から彼はいつも口の中で体を揺らし僕を脅す。 「オマエな、オレがいつまでもそばにいると思ってんじゃねーぞ」 差し歯がそう言う。 彼をなだめすかし、食事の時も彼に負担を与えないよう注意を払う日々。 「なんだかうまくやれてるな」 気

          マカロニ 階段型の尻尾

          今年の一月まで我が家には猫がいた。そいつの話。 三十代の始め頃、知り合いの家の庭に現れた三兄妹のおそらく末っ子。 糞害などが酷く隣家の住人に保健所に連絡されるというので、それではウチで引き取ろうと捕獲機を仕掛けた。 歳上の二匹とその母猫はとても賢かったのか罠にはかからず、とても鈍臭いビビりのその黒猫だけがカゴに閉じ込められた。 その家の奥様から「一匹捕まえた!」と連絡をもらい駆けつけると、たまに見かけるカギ尻尾よりもいびつな階段型の尾を持つ子猫がカゴの中でシャー、シャー、シ

          マカロニ 階段型の尻尾

          缶ビール35000708

          午前中。 店のグリストラップ、フードの掃除をしながら350を3。もう酔う。

          [ALE&BOOKS]

          神奈川県の茅ヶ崎市で中華料理屋を営んでおります、横濱屋の青 木と申します。当店のオススメはパシフィックブリューイングの ビールとニクヤキソバのコンビです。 おそらく近未来。奇妙で獰猛な生物が蠢く、混沌とした世界を生 きる人々の物語を紹介させていただきます。 [武装島田倉庫]椎名誠 七篇からなる連作短編集。凶暴な[魚乱魚齒(かみつきうお)] や檻に閉じ込められた謎の少女など、様々なものが運びこまれる 島田倉庫で働き始めた可児才蔵とその同僚達の日々。 やがて来るであろう[白拍子]