見出し画像

6畳1K リボ払い 100円の文庫

憧れの土地、東京 中央線。
21歳の僕は中央線沿いに行けば、己に秘める何かが見つかるだろうと、無計画に中央線荻窪駅北口に住みはじめた。

音楽が好き、漫画が好き、酒が好き、東京に行けば好きなものに囲まれて生きていけるのだろうと考えていた21歳の僕は今の僕と変わらずやはり甘かった。
生活苦。服の上からチクチクと細い針を刺してアザを広げるリボ払い。リボ払い!

漫画もろくに買えず、ライブも半年に1回行けるか、服はいつも同じ、中学生の時に買ったアロハシャツとお店支給のコックコート。
待ちわびた月に何日かの休みは駅前のブックオフの100円コーナーを物色して家で本を読むこと、ひとっこひとりいないタウンセブン(駅ビル)の屋上に行き本を読むこと、昼飯のおにぎりを握り荻窪図書館の中庭で本を読むこと。

先立つものが心許なく、僕の行動範囲は狭かった。でもどこに行くにも1日2本と決めていたキリン淡麗を相棒のように持っていった。近所のツルカメで2本260円だった。

思っていたようにライブも行けず新刊も買えなかったが、気づいたら安い古本を買って酒飲みながら過ごすのが好きになっていた。
あの頃は1日2本を大事に飲んでいたんだな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?