少年 25 紗希 2024年10月21日 20:47 少年が走って来たのだ。信号が青になると同時に。そして雨宿りしている、俺の隣に並んで立った。何なんだ、この子は。やはり雨宿りするつもりなのか?ならば、もう少し離れてくれないか。店の軒下は、こんなに空いてるんだ。何も俺の直ぐ横に並ばなくてもいいだろうが。まだ小学生だ。3年か?4年か?前を向いてニコニコしてる。大丈夫か、おい。親はどうした。もう暗いじゃないか。俺が見てるのに、何の反応もない。ずっと笑顔のままだ。悪いが俺は今、かなり不機嫌だ。留年しそうだからだよ。だから、お前に構っている暇は……。あれ?ここはどこだ。景色が違う。何があった。あゝ、遂に俺もイカレたか。「スクランブル交差点」こ、こいつ、急に喋った。スクランブル交差点?ここは普通の交差点だぞ。うっ頭が痛い「直ぐに治るよ」こいつ、他人事だとおもって。ガキのくせに。周りが歪む。ヤバいのか、俺は。「お前だってガキだったろ。ケンジ」「何で、俺の名前」「そしてラストだよ」何だよ。ラストって。!!!!!「思い出した?日本で2番目に小さいスクランブル交差点」「お前……コースケ……か」「ピンポン。車に撥ねられちゃったけどね」「な、なんでここに」少年は、コースケは俺のことを見た。「とーちゃんも、かーちゃんも、ボクんとこに来たんだ。だからね。ボクはもっともっと上に行くんだって」「上って……」「神さまの近く。今日きたのはね、ケンジに会いたくなったから。でももう行くね。留年だっけ?頑張れよ」「留年は頑張るもんじゃないよ。バーカ」「ハハハ。だって知らないもん。じゃあねケンジ」「じゃあな。コースケ、また遊ぼうな」「うん!遊ぼう。バイバイ」「バイバイ」そして少年は消えた。俺の頭痛も治っていた。「雨も上がったし、俺も帰ろう」無事に卒業できたら、久しぶりに帰ってみるか。俺とコースケの故郷に。 了 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #短編小説 #ありがとう #故郷 #ともだち #スクランブル交差点 25