耳から入るレシピ
料理のレパートリーが一向に広がっていかないことにずっと疑問を抱いていた。
食べることは好きだと思う。というか大抵の人よりはしっかりと、毎日3食、そしておやつも食べている。
外でフラーッとお店に入るみたいな素敵な習性がないので、人と会える時以外は大抵自炊。感じの良いレシピ本を買うことだって度々あったし、料理家さんと共に仕事をすることだって少なくない。そういえば新卒で入った会社は食品メーカーだった。当時は毎日のように外食をして、色んな料理に触れていたはずなのに。実家でもたくさん美味しいものを食べさせてもらっていたのに。私の食事情は私の感覚で全くのぼっていっている気がしなかった。
豊かな食事への憧れはあり続ける。どうせ生きるなら美味しいご飯を作って、美味しく食べる人生の方が幸せに決まっている。
その考えをもってしてもレシピを調べる気分にならないということは、なんというか、それまでということなのだろうけど。どうにかならんもんかねという感じ。
昨年の秋頃、食事をしている際に料理家の友人(その日が初めてしっかり話した日だった)に、レンコンが冷蔵庫にいるのだけど、使い方がわからないとぼやいたところ、炊き込みご飯がいいですよ〜とさらりと他の食材と共に提案をしてくれた。え〜おいしそう!いいね。という旨を伝え、話は違う話題にシフトしていったのだけど、後日ふとそのれんこんの炊き込みご飯というワードが頭の中に浮かんできて、気付いたらレシピを調べ、気付いたら作って美味しく食べていた。
耳から与えられた極々シンプルな情報が、その後の私の行動を変えてくれた。それはとてもスムーズで変な引っ掛かりのない、良い導線だったように感じて、少し感動してしまった。その日以来私は耳から入れる情報に漠然と好感を抱いている。
トップの写真は、今日、その料理家の友人が地元で積んできてくれた雪ノ下(ゆきのした)という薬草です。天ぷらにしてくれて、それがもっちりしていてとっても美味しかった。私も散歩中に見つけてみたいな。