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梅雨入りし、初めてまとまった雨となった月曜の朝。私は3ヶ月ぶりの健診のため、駅から大学病院へ向かっていた。
前を行く親子。
裸足にサンダルばきの母親は、傘を差しながら、幼い女の子を抱き抱えている。
女の子も傘を持っているのに、差さずに握りしめたまま、母親の細い体にしがみついている。
お母さんは大変だわ。

しばらくすると、女の子は母親の懐から降り、自分で傘を差し、自分のゴム長をはいた足で歩きだした。
お母さんが疲れちゃったのか、少女が歩きたくなったのか。
ピンクのゴム長に、黄色の雨ガッパの背中にはアヒルさん親子が、ピンクの傘には、うさぎさん。雨の日の子供が歩く後ろ姿は、こんなにかわいらしいのね。

親子の目的地は、私と同じ病院だった。
病院に行かなければならないのは、母親だろうか。女の子だろうか。
こんな幼子を連れてくるのだから、答えはおそらく、そういうことか。
重い病ではありませんように。

雨の日の親子の後ろ姿は、このうえなく愛しく、いつかの自分とわが子を思い起こさせるほど、せつなかった。
人は誰かにしがみついて生きていく。
誰かにしがみついて、大きくなる。

しがみつける誰かがいる温かさ。

#雨

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