江ノ電に乗ったピンクのイルカちゃん
日射しはすっかり春めいた週末。
昼過ぎの江ノ電は、観光の行きと帰り、もしくはまだ行楽中の乗客で、狭い車内がほどよく埋められる。
ふと、ピンクのイルカのぬいぐるみを抱き締めて座る3才くらいの幼女に目を奪われる。
正確には、まずピンクのイルカに。
水族館の帰りなのかな。江ノ島水族館には行ったことはないが、イルカのショ―とかやってるんだろうか。
ピンクのイルカは、幼女の上半身から顔くらいの大きさ。彼女が小さいからで、けして大イルカではない。
よほどイルカが気に入ったのか、ずっと抱き締め、時にはイルカの頭部を自分の顔に押し付けたりしている。
よく見ると、おかっぱ頭の幼女は、昔息子の幼稚園のクラスにいた子にも似て、可愛らしいながら、とても真面目で正義感の強い視線を、車内に投げかけている。私の偏った先入観かもしれないけれど。
そしてさらに見ると、彼女のスニ―カ―はピンクである。スパッツも淡いピンク。ジャケットもピンク。。
抱きしめるイルカもピンク。
つまり、身に付けているもの全てがピンクなのでした。
大人にはできない芸当である。
その徹底したピンクっぷりは天晴れだ。親の趣味もあるだろうが、今の彼女は選ぶもの全てがピンクのピンク大好きちゃんなんだろうな。
ハンカチも、弁当箱も、箸も、歯ブラシも、筆箱も消しゴムもなにもかも。
昨秋あたりから、ファッション界ではピンクがひとつの流れを作っている。そしてこの春は、店によってはピンクコ―ナ―が作られるほどのブームである。
確実にピンクはトレンドカラ―だ。
しかし、大人が幼児に選ぶのは、流行りなく淡い可愛らしい色が定番で、ピンクは永遠のトレンドカラ―ではないだろうか。選ばれた色に、子供は知らず知らずに染められていく。
業界が作ったトレンドでなく、自然と選んでしまうピンクブームは、意外と間もなく卒業してしまうんだろうな。
ぬいぐるみを人目憚らず抱きしめるのを、気づけばできなくなる頃に。
私はといえば、ピンクは膨張色だから避けていたけれど、春の外出着にピンクのセットアップを買おうか、真剣に悩んでいる。
誰かに良く見せるためでなく、自分のためにお洒落を楽しむ歳になってしまったから、膨張しても構わない。
でも、合わせるのはピンクじゃなくて、黒のエナメルパンプスにするけどね。
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