耳あて
やっと見つけた、駐輪場の空き枠に自転車をはめていると、楽しそうに会話する女性の声がする。
視線を上げると、会話ではなく、女性の独り言?
いえ、彼女は共に散歩する愛犬に、話しかけていたのだ。
朗らかに。
犬は、毛糸の耳あてをしていた。温かそうね。
この冬一番の寒波が訪れるとの予報の日。私も、お気に入りの耳あてをし、ダウンコートの完全防寒着。
私も、愛犬との散歩中、話しかけていた。ひとが聞いたら、独り言のようだったろう。
寒かったろう。
君には耳あてなんてしてあげなかったから。
最後の冬から、もう2回も季節は巡ってしまったね。
図らずも懐かしさが込み上げた、この冬一番の寒い朝。