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メンタルヘルスに有効な運動とは❓

こんにちは。

産業理学療法で社会と理学療法をつなげたいyokoです

理学療法士は「身体の悩みを、動いて治すことが得意な専門家」です。

先日プレゼンティーイズムの原因上位2位は、
メンタルヘルスと筋骨格系疾患である
という内容の論文を紹介しました。

プレゼンティーイズムについての記事はこちら

 
理学療法士なので筋骨格系の治療は得意分野です。
 
では、メンタルヘルスにおいてはどうでしょうか?
メンタルヘルスには、認知行動療法、心理療法、薬物療法など様々な治療があります。

そして、運動(身体活動)が有効であるという論文も、とても多いのです。

運動とメンタルヘルスの関連が見られなかった、と言う報告はありますが、無効であったという内容の論文は私が探した範囲では見当たりませんでした。

Do workplace physical activity interventions improve mental health outcomes? 
A. H. Y. Chu, D. Koh, F. M. Moy, F. Müller-Riemenschneider
Occupational Medicine, Volume 64, Issue 4, June 2014,
Pages 235–245


この論文は職場での運動(身体活動やヨガ)の効果を検証したシステマティックレビューです。
3684本の論文から研究の質が良い17本を選び、運動がストレス、抑うつ、不安にどのように影響しているかを調べたものです。
電気通信業界、カジノ、大学、保険会社、郵便局、地方自治体、洗濯業者、家庭用品メーカー、育児、高齢者介護、金融サービス、警察官など、多様な分野での研究が対象となっています。
 
質の高い研究結果では、
・質の高い1つの研究のみであった [19]。Atlantisらは、カジノの従業員44人を対象に、行動修正と組み合わせた運動介入プログラムを24週間にわたって実施し、治療群のストレススコアが-37%という有意な改善を示した(効果量、d = 0.56, P = 0.036).
 
・Atlantisら[19]は、運動トレーニング+行動修正プログラムを受けた参加者は、プログラムを受けなかった参加者と比較して、うつ病スコアを-26%(P<0.05)有意に減少させたことを明らかにした。一方、de Zeeuwら[21]は、10週間のプログラム終了後、対照群と比較して、運動トレーニングを受けた参加者のうつ病スコアが改善(d = -0.90)されたものの、2群間の差は有意ではありませんでした。
 
・ヨガの実践を評価した2つの質の高いRCT [20,28]では、不安の有意な減少が示された。
 
などが紹介されています。


 
また運動強度については、中等度までが良いとされており、過度な運動は不快感を感じることがあるという報告もあります。
別の論文では、オーバーユースはうつ症状に似た心理症状を引き起こす可能性もあるとのことです。
(Tânia R Bertoldo BenedettiLucélia Justino BorgesEdio Luiz PetroskiLúcia Hisako Takase Gonçalve:Physical activity and mental health status among elderly people)
 
アメリカスポーツ医学会とアメリカ心臓協会は、中等度の有酸素運動を週150分行うことをうつ病などのリスクを下げる理由で推奨しています。
 
 
私が好きだったのは
It is also important to note that people have widely varying preferences for the types of activity they wish to engage in. Some of the mental health benefits may be associated with doing something people “want to” and enjoy.
と言う記載。
Stuart Biddle : activity and mental health: evidence is growing,World Psychiatry. 2016 Jun; 15(2): 176–177. )

日本語訳は、
(運動をするにあたり)どのような活動をしたいかという好みが大きく異なることに留意する必要があります。メンタルヘルスにおける利点は、人々が「やりたい」「楽しい」と思うことをすることに関連しているかもしれません。
 というもの。

どんな運動にせよ、活動にせよ、相手のやりたいと思える運動をチョイスすることが大切なんですね。

そのためには、本人の今の生活状況、今までの経験、運動に対するトラウマなどがないかを把握しながら一緒に選んでいく過程が必要だと思います。
 
病院でリハビリを行っていると、患者さんが運動についてネガティブな思いを持っているケースにも出会います。
「過去に部活でしごかれすぎて、運動が嫌いになってしまった」
「ケガで痛い経験をしたから、もうやりたくない」
こういったケースでは、運動を提案しても実装するのがとても難しいのです。
無理に言っても心を閉ざしてしまうので、時には必要と知っていて「待つ」こともあります。

辛抱しているうちに患者さん側から「ちょっと余計に歩いてみてもいいの?」などと聞いてくれることがあります。
その時に初めて「20分以上が効果あるんですよ」「歩く以外にもこんな種類がありますよ」と伝えるようにしています。 (平静を装ってますが、心の中では「キターーー!」って小躍りしてます。笑)
 
また産後の運動不足で腰痛になっている患者さんが、ポツッと「前はズンバとかやってたんですけど、今はまずいですよね」と聞いてくれたことがありました。
筋トレはあまりしてくれなかったけど、ズンバを許可したところ子育ての合間を縫ってYouTubeを見てやってくれました!
症状が無事に改善し、リハビリを終了する間際、「まさか理学療法士さんにズンバOKと言われるとは思ってなかったです」と言われました。
 
プレゼンティーイズムの上位にいるメンタルヘルス。
それに対して理学療法士は何ができるでしょうか。

 
メンタルヘルスに運動が有用であるならば、当然運動処方はするのですが、それだけでは足りません。
 
運動するきっかけを作るために、対話すること
モチベーションがフイっと上がった瞬間を見逃さないこと
運動について聞かれた時に、たくさん選択肢を持っていること

 
理学療法士が普段の臨床でやっていることです。
これがプレゼンティーイズムの改善につながり、働いている人の幸せや職場の業績につながると思うと、まだまだ頑張りたくなります!

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これからも産業理学療法と理学療法士が、社会に必要とされるために、いろいろな視点から情報発信をしていきます!
思うところがありましたら、コメントなど頂けると嬉しいです。

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