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国境沿いの街、Basel:09(旅での出会いから感じたこと)
今回の旅では本当にたくさんの出会いがありました。
人との出会いに限らず、目に映る景色もそれによって生まれた新しい感情も、何もかもが全て出会いだと思っています。
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出会ったもの全てを覚えておきたいけれど、それはなかなか難しい。
写真を撮る時、いつも衝動的に感じているのは「忘れたくない」と言う気持ちです。どんなに忘れたくても忘れられない事もありますが、基本的に人は忘れて行く生き物だと思っています。
写真を始めたのは高校生の頃ですが、始めたきっかけはまさに「忘れたくないから」でした。
そもそも私の記憶力の乏しさが深刻なだけ、と言う話でもあるのですが、それはさておいても忘れないためにはそこにストーリーがある事が大事だと思っています。
継続的に覚えておく事は難しくても、写真を見返すと蘇ってくる記憶には何かしらのストーリーがあるのではないでしょうか。
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これはロンシャンへ向かう途中、ベルフォールの駅で乗り換えに悩んでいる我々に声をかけてくれたおじさまが、次の列車までの待ち時間話し相手になってくれた時の。
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スリに合わないように気をつけなさいね、と何度も言われました。
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ミュールーズの駅で。ホームで列車を待っている間すぐそばにいた彼女が可愛くて。ものすごく遅延していて内心ソワソワしていたけど(乗り換えに間に合うか不安だった。)彼女が目が合う度に笑いかけてくれたのが嬉しかった。
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バーゼルの公園で。ものすごく幸せそうに歩いている二人がまぶしくて。(本当にらぶらぶだった・・・。)
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酔っ払いは全世界共通・・・。(からまれた。)
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小指にキュンとした。
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好きな食べ物は?と聞かれたら「買い食い」って答えてた頃の事を思い出した。
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首が長い生き物を一生懸命撮ってた。
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友達以上恋人未満(妄想)
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走りさる少女をやたら撮ってしまうんだけど、なぜだろう。
と、出会いの数だけストーリー(と言うかただの妄想)があるのですが、その中でもとても印象的だったのが、
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このおじいちゃん。
トラムを待っている私たちに、日本人ですか?と話しかけてくれました。
昔日本に住んでいた事があり、奥さまは日本人との事。
この時はそこまで長くお話をする時間がなかったのですが、別れ際にメールアドレスを交換しました。
アドレスを交換した日の夜に送られてきたメールには、彼が日本にいた時の話、その当時スイスから日本に渡るのはとても困難だった事や奥さまの話、それらと共に家族の写真が添えられていました。
そしてメールの最後に
"Please send me you life story and tell me what brought you to Basel”
と。
”Please send me you life story ”
「あなたのライフストーリーを聞かせて。」
すごく印象的なフレーズでした。
日々の生活の中で自分の人生を振り返る事はなかなか難しい。今と少し先の未来の事で精一杯。
そんな中、自分の人生を振り返りながら彼への返信を書いていると、今までの事だけではなくこの先自分が何をして行くべきなのかが見えてきたような気がしました。
きっと、「どうして東京に来たんだろう」「どうして写真を続けているんだろう」「どうしてあの時こうしたんだろう」「どうして、どうして?」と言う自問自答が出来たからだと思います。
これはこの旅での一番の収穫で、本当にありがたい出会いでした。
おじいちゃんとは今でもたまにメールのやり取りをしています。バーゼルでも外出自粛を余儀なくされる日々が続く中、元気に過ごしている姿や彼の庭に咲く花の写真を送ってくれます。
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今は海外旅行どころか日々の暮らしの自由さえ制御されているけれど、この生活を乗り越えた先には新しい出会いがあると信じています。