【往復書簡/3通目】5月の庭のスープをどうぞ
みやうへ
お手紙ありがとう。往復書簡のメインビジュアルが決まって、2ヶ月かけて一巡するこのスローなやりとりも本格スタートだね。みやうの丁寧に綴られた文章から、札幌に訪れた春を追体験することができて私までウキウキした気分になりました。
「北海道産蒸しアスパラ」ごちそうさま!
栃木が夏日になるほど暑くなった頃に、札幌はようやく、長く、寒い冬が終わり、春がやって来るんだね。春の芽吹きを丸ごといただく蒸しアスパラは、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しいんだろうな、と感動がそのまま伝わってきました。その喜びは、寒さに耐え忍んだ人にしかわからないことなのかもしれないね。関東の人が、待ち焦がれていたかのように春にタラの芽を食べる、あの喜び方とはちょっと違う、もっと大きな感動なんだろうなぁと想像します。北国の春の食卓、ぜひいつか呼ばれたいな!
うららかな春の気配を感じられるお便りが届いた頃は、栃木はもう梅雨入り目前。今は梅雨入りして、あの鬱陶しい雨と暑い日々がやって来ました。内陸部特有の寒暖差の激しい栃木は、梅雨入りする前の5月は新緑が一気に芽吹いて、爽やかな風が吹き、黄色や紫色のお花が次々に咲く一番いい季節。1ヵ月しかないその時期を、今年は休業要請の影響でじっくり満喫することができて、その時間は少なからずスープの創作意欲を掻き立てるものとなりました。毎日少しずつ膨らんでいく蕾を観察したり、花が最も美しいタイミングで放つ色と香りの素晴らしさに気づいたり、ワイルドストロベリーがどのくらいかけて赤く色づいていくのかを見つめたり。毎日、庭とポタジェ(菜園)を行き来しながら、たくさんのインスピレーションを得て浮かんだのが「季節の色をスープにする」という試みでした。そうして、1ヵ月間の構想を経てできた一品がこれ。残念ながら、今回ポタジェのお野菜はビーツだけなんだけど、いつか全部の食材を育てたときにはみやうにごちそうしたいな。
「5月の庭のスープ」
ライラックに始まり、チャイブ、アリウムなどの紫色の花が次々と咲き、ワイルドストロベリーの赤い実が成り、ハーブの緑が青々と茂ってくる庭を、旬のお野菜で表現したものです。通常、野菜をクタクタに煮て旨味をしっかり引き出すスープを作ることが多いのだけど、これは色と春のフレッシュさを表すためにいつもより煮込み時間は短めにして、あっさりとした味に仕上げました。スープ皿の底には焼いたコールラビを並べて、煮た野菜との食感の違いを楽しめるようにしています。そして、トッピングはかために茹でた紫カリフラワーとポタジェで今年初収穫の生のビーツ。
それでは、どうぞ召し上がれ。
五十嵐洋子