Word 14 そしてまた少し曇る空
私がG太郎と話している同時刻。
【仲良くお話されてますね】
はるかのホワイトボード芸が火を吹く。
「ん?あぁ。仲が良いのは良い事だよぉ。仲が悪いよりずっと良いさぁ」
「ホントッスね。でもこうして離れて見てるとホントに世界を滅ぼす魔女なのかな?って思うッス」
「人は見かけによらないモンよ。あたしのアフロにナイフが忍ばせてあるなんて誰も思わないでしょ。このファンキーファンタスティックなヘアーにね」
【そうなんですか?ナイフなんて使わなくても良さそうなのに。MAJIDE!】
「ツッコミ甲斐があるわね。はるか。MAJIDE!」
「こういう時間がずっと続くと良いんでしゅけどね。そうもいかないのが辛いトコでしゅ」
イズの一言が空気を少しだけピリつかせる。
ベルには教えられていない神代七の任務。
この七人が他のインテレクトよりも強力な力を持っている理由。ビサイズである理由。
神代七という神の代わりの七人という名前の理由。
「そうだねぇ。ベルちゃんの出方次第だからねぇ」
【伝承通りならそうですね。伝承以外ではわたし達が護衛の任務が初めてなワケですし】
「まぁどうなるかはその時にならんと分からんからな」
「まぁアタシはそうならないのを祈ってるわ。本気でね。そうならない事を」
「そうでしゅね」
そう呟いたイズの声色は揺らぐ蝋燭の炎の様な。決意を含んではいるものの少し弱く聞こえた。
神代七の最大の任務。
暴徒の鎮圧でもなく。双子の護衛でもなく。
世界を滅ぼすと決めた場合の双子の抹殺
それが神代七の最大の任務。
その為の強大な力。
仲を深める事はそのまま自分達に還元される罪悪感の大きさだった。
「とは言え戦わなくて済むかもしれんしな。そりゃあその時にならんと分からん」
【願わくば戦わない方向でいきたいですね】
「まぁ夢見るのはほどほどで。現実を考えなきゃぁねぇ」
「地獄は見慣れてるッスから何とか切り抜けるッス!」
「その時に。でしゅね」
伝承は伝承であっておとぎ話。
私達が向かっているのは過去か未来か。
それでも私達は現在を生きている。
未来がどうであれ。それは変わらない。
世界を構成する一つの私達は世界からみたら限りなく小さい、無いに等しい様な存在。それでも私達は生きている。
過去を造り、現在を生き、未来に向かって。
過去が肩を叩いて振り返りたくなっても。現在が足を引っ張ってその場に留まりたくとも。未来が甘美な色合いで手招きしていても。
一つずつ生きている。
この穏やかな時間が少しでも長く。少しでも緩やかに。私達には願う事しか出来ないのかもしれない。
「キャピタルも決着つけなきゃいけましぇんね」
イズはキャピタルに返答を促す。
キャピタルは気だるい雰囲気をまとったままいつもより強い視線をイズに向けた。
「そうだねぇ。この時を一番待っていたのは奴さん達じゃなくボクかもしれないしねぇ」
「それこそ何とか話し合いで解決出来んのか?」
「そうッスよ!戦うとか以外で何とかなんないッスか?」
口々にキャピタルに言葉が向けられる。
少し視線が緩やかになる。
「あっはっはっ。そりゃあ厳しいよぉ。話し合いは散々やって来たんだからさぁ。ボクが始めちゃったケツはボクが持つよ。皆に迷惑かけちゃうかもしれないけどさぁ」
【迷惑なんかありませんよ。我々は仲間であり家族みたいなモノなんですから】
「キャピタル。気にしないで。アタシ達は手を貸すし手も出すわよ。他も出しちゃおうかしら!」
ラヴの振り切った冗談に少し微笑んでキャピタルは続けた。
「ありがとうね。みんな。なるべく迷惑かからない様には努力するからさぁ。だって」
一つ間を空けてキャピタルは続けた。
「支援者はボクが造ったんだから」
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