Word 8 水星の宮にて

水星の宮に通されてから20分程が経過した。私達は待っている。
何を?
もちろん他の神代七の到着をだ。
一人一人集めて行くのが正当だ!と主張していたイズとジョーだったがハルカの
【うちに皆集まって合宿感覚で顔合わせ、一泊したら良くないですか?】
の1言であっさり
「確かにそうッス!」
「盲点でしたね。さすがムードメーカーでしゅ」
と決まった。
そんなバカな!普通にそれで良いじゃない!何が盲点!?というかさすがムードメーカーでしゅの意味も分からないし!それにムードメーカーっていうかイジられ担当みたいだしハルカさん!
ホワイトボードに書いては話題を変えられ書き直しの繰り返し。軽くイジメだし!
でもハルカさんは
【私がトロいので】
済ませてるし!
食事も皆が揃ってからという事になった。バタバタとハルカさんが食事の用意をしている。
「何かお手伝いしましょうか?」
【いえ。産まれた国の料理をご馳走しようかと思ってまして。大したモノをじゃないですが。でも口に入るから小さなモノかな?あれ?どっちかな?】
ハルカさん。筆談じゃあイマイチかもね。
イズとジョーは異国のゲームをして遊んでいる。ヒゲの赤いオーバーオールの男が動き回るやつ。
ハルカさんがパタパタとやって来た。イズとジョーがそちらを見る。
【到着したみたいです。今のですはDEATHって意味じゃないですよ】
さすがムードメーカー。イズは爆笑している。ジョーは意味が分からないのか入口の方へ向かった。
しばらくして
「お久しぶりッス!今ゲームしてるッス!」
と声が聞こえた。どうやら来たらしい。と同時に家が軋み始めた。
「魔女さんいるんだろ?」
バタバタと足音が聞こえる。
「ちょ…G太郎さん。ダメッスよ!」
苦しそうなジョーの声が聞こえた。イズは平然とゲームをしている。何?仲間割れ?と思った時、部屋の入口に坊主頭の男が現れた。かなりの筋肉質な体。いかつい。そう。いかつい雰囲気。切れ長の目は眼光鋭く私に視線を注いでいた。敵意では無く興味を。
「そこまでにしなしゃい。G太郎。ベルに失礼でしゅよ」
イズがゲームをしながら言葉を発した。家の軋みも止んだ。何?何かあったの?
「悪い悪い。ベルって名前なんだな魔女さん。俺はG太郎。名前にアルファベットを入れるキレキレのセンスの持ち主さ」
「ベルといいます。よろしくお願いします」
バタバタ足音が聞こえる。
「ちょっと!ヒドイじゃない!いきなり!IKINARI!ワードを使って魔女がワードの効果を受けないか試したんでしょ!?」
派手な金髪アフロのオネエ口調が飛び込んでG太郎と名乗った男にフライングクロスチョップをした。
「悪い悪い!こんな機会万に一つだからよぅ」
G太郎は悪びれる様子もなく言った。
さらに足音が続いた。
「コラ!何しとんじゃ!いきなり失礼じゃろ!人の宮で!しかもワシらも巻き込みよって!燃やしたろーか!」
異国の文化で戦隊ヒーローっていうのがある。ソレのレッドみたいな全身コスチュームの人が口悪く怒鳴り込んできた。
その後ろに続いてジョーに肩を貸したTHEイケメンみたいなおじさんが現れた。
「G太郎。さすがにやりすぎだろうよぉ。ジョーが
ぺちゃんこになるトコだったんだからさぁ」
気怠げな話し方をする口髭を蓄えたおじさん。目は優しくジョーを気遣っている。
台所の方からパタパタとハルカさんがやって来た。
【今体が重くなりましたよ!まさか太った?わたし!急に!秒で?嘘?皆さん!お久しぶりです!太った?】
「ハルカちゃん。お久しぶりだねぇ。イズちゃんも。とりあえずG太郎謝りなよぉ」
「すまん!イタズラが過ぎたみたいだ!マジでスマン!」
「ホンマで!次したら燃やすけーよ?」
「アフロ潰れて無い?ねぇ?あたしの!ATASINO!アフロ!」
「キツかったッスよ」
「皆変わらずで良かったでしゅ」
あれ。7人揃った。バタバタ揃った。
「しゃて。揃った所で自己紹介といきましゅよ。改めて。リィズ・イズ。神代七、太陽でしゅ」
「G太郎。神代七、月だ。てかホントごめん!」
「ジョーッス…神代七、火星ッス。体がバキバキッス」
「ハルカです」【神代七、水星です。水性じゃないよ!】
「ジュダス・キャピタル。神代七、木星。この話し方だけどさぁ。曲がった事大嫌いなんだよねぇ。よろしくね。ベルちゃん」
「神代七、金星。ラヴ・ラヴ!ブじゃなくヴね!唇噛む方だからね!KUCHIBIRU!よろしくね」
「神代七、土星!フェイタルレッド!必ず護るけー!安心してな!ワシらが!」
こうしてみるとさすが神代七。強そう。でもそれより。派手!キャラのパレードみたい!なにこれ!派手じゃなくては選ばれませんみたいな規則あるの!?
「ベルちゃん!さてはあたし達のルックスが派手って思ってるんじゃないの!?HADEだって!」
ラヴさん。あなたが引き上げてますよ。派手を。
「まさかキャラのパレードじゃとか思っとんか?」
そうだよ。一番引き上げてるよ。キャラを。
「まぁ個性的ではありましゅが。わたしが一番個性を引き下げるのに1役買ってましゅね」
ごめん。イズ。美女でその話し方は立派にキャラだよ。
【わたしは!?没個性で紛れてませんか?個性出したい!個性!】
大丈夫。ハルカさん。ホワイトボードのムードメーカーは個性的過ぎるほど個性だから。
「そう考えたら俺ら個性少ないッスよね」
「確かにねぇ。あんまり見た目も印象的じゃないしねぇ」
「まぁこれだけ派手な奴らと一緒なら逆に個性的に見えるんじゃないか?てか重ね重ねごめん!」
どうしよう。色々気になる事だらけ過ぎる。
にぎやかではある。
でもあっさり私を受け入れてくれて温かくて優しい人達だなと思う。初めて会ったって気がしないけど。
「ベルちゃん。気にしなくて良いんだよぉ。ボクらはキミを護るためにいると言っても言い過ぎじゃないんだからさぁ」
「そうよ。あたし達はいつ産まれるとも分からない双子の為に代々存在してたのよ。SONZAI!何も気にする必要なんてないわ」
「色々言う奴もおるじゃろうけどワシらはベルの決断と謳歌を護る為におるけー」
【わたしもこんなだけど護っていきますから!大丈夫ですよ!DAIJOUBU!】
「ハルカ!やめてよ!キャラ被せないでよ!」
温かい人達だな。キャラが邪魔しがちだけど。
【ごめんなさい!やってみたくて!というかご飯出来ましたよ!食べましょう!TABEMASHO!】
「ハルカ!」
「相変わらず騒がしいねぇ。よく張り合うんだよ。どっちが派手かとかさぁ」
「仲良しの証拠ッス!」
「オレキャラタチニクイジャン」
「G太郎は坊主っていうキャラの立て方でしゅ」
「見た目じゃとワシより派手はおらんじゃろ」
確かに。でも何だろ。初対面だけど家族みたいだよ。
お母さん。良い人達みたい。私この路選んで良かったみたいだよ。

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