コンビニの豚汁

レンジで温めた。豚汁の容器は結構熱かったけれど、取り出す一瞬のことだったので、両端を小さくつまんで天板へ運んだ。全身を守るラップを剥がしていくと、衛生的に守られていることに初めて気づく。フタを外す勢いに気をつけるつもり、そんな気持ちも甲斐なくわずかにスープが跳ね落ちた、小さなしずくが白く濁った、震えながらキッチンを映すその瞬間から注意を奪う豊かな蒸気と白い香りがすっかり鼻元を満たして消えた。もはや居場所は自宅にはなく、実家の近くで冬に開かれていた市民祭りの昔話だった、背の低い自分は知らないけれど向こうは知っているよという顔つきのおばさんが、手元を動かすエプロン姿でこちらに発泡トレーを用意してくれている、そのテントの近くから十分に漂って旨味を知らせる豚汁の香り...

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