走ることに関わる覚え書き
夜、とりあえず道を走ってみる
それは知っている道から始まり
馴染みがあり
うんと自信を持って前進する感覚のこと
ある瞬間、それは断片的に、初めての感覚がやってくる
私の知っている道が決して途切れることなく姿を変える兆し
知らない見え方の始まり
このような見え方は次第に体つきへ移ろい
いくつにも伸びる舗装の帯が足元を粘らす
そうして迷子になる
迷子はこころもとないが
それだけ身体には嬉しいことでもある
弾けた汗のあらましは冷たく響き
明らかに全身は震えてくる
激しく夜冬を吸い込んだ胸奥も嬉しくはなさそうでも
走る姿はどうも笑顔
微笑みを逃さない
それは実際、顔にも明らかだったろう
知らない道は見え方だけではなく
地面を蹴り付ける姿そのものに大きな違いを産み出した
本人にも気づかれないような
なんとも言えない身体の揺れの強弱
これが町
もしくは土地の姿か、と
筋肉痛が遅れてくるように感じ始めた。