母の生きる場所を欲張って探してみよう〜在宅は無理=有料老人ホームじゃないはずだ
「夜ご飯食べたらね、ベッドから出ちゃダメって言われちゃうの。
お母さんね、いっつも怒られちゃうの。」
流行りの感染症で母の施設も陽性者が多数出て、1ヶ月半ぶりにやっと面会ができた。
久しぶりに会った母の表情は暗く、元気がなかった。
こんなに変わるものか?と目を疑いたくなるほどだ。
母は、進行性核上性麻痺という転んでしまう病気だ。
3ヶ月前まで在宅でなんとか1人で暮らしていた母だが、室内での転倒が増え、頭や顔に外傷を作り救急搬送されることも多かった。
もう無理だ。
そう思って急いで施設を探した。
私はやることが早い、施設に入れようと決めてから3週間で入居となった。
神経難病の専門施設で、カテゴリーは介護付き有料老人ホームだ。
ここなら、リハビリも専門的に行ってくれる、
介護スタッフも病気をよく知っている、
これで安心だ。そう思って選んだ場所だった。
でも現実は違った。
ベッドの目の前の冷蔵庫から飲み物を取る
トイレに行くために隣の車椅子に移動する、
そんな小さなことで転んでしまう母は行動を制限されている。
もちろん
「動くときはナースコール押してくださいね」と優しく言ってくれるスタッフもいる。それでも自分で動いてしまう性分であり、またそれを守れないことは病気の症状の一部でもある。
元看護師の私としては施設側の気持ちも痛いほどわかる。
これで転んで骨折をさせてしまったら大変なことだ、そんな緊張感の中働いているのだ。
でも、このご時世で日中のレクやリハビリも縮小し、母はほとんどの時間をあの狭い部屋のベッドの上で寝転んでいる。
ずっとベッドで寝ていたら、あっという間に筋力は落ちる。
肘掛け付きの1人掛けのソファーを置きたいと申し出たら、移動の時に転んでしまうのでダメだと断られてしまった。
外出もできない、面会も1週間で1組のみ15分。
〝このままでいいのだろうか?〟
姉に相談したら、
「あなたは改善したい病気だよ、もう十分やったよ」と言われ、
そうなのかもしれないと思い返す。
もっともっと。私は欲張りすぎているのだろうか?
動けなくなった母は、あの場所でひっそり過ごすしかないのだろうか?
大切な幼馴染に話したら
「もっと欲張っていいんだよ、今の場所がベストなんだ、だから少しのことは我慢するしかないっていうのは思い込みかもよ。
お母さんに合う場所があるかもしれないよ。
焦らなくていいから、アンテナを立ててごらん。自分を納得させたいって理由でもいいじゃない。」
その言葉に奮い立たされる。
35年前に離婚した母は、20年前に自分1人のためのお墓を買った。
そこには「空」と彫られている。
母は、空が好きなのだ。
このまま病室の窓から小さい空をみるだけで
彼女の人生が終わってしまうのは
寂しすぎる。
もう一度、探してみよう。改善したい病でもいい。
後悔は、したくないから。