23 肝臓:太かったり、砕いたり
肝臓(かんぞう)は哺乳類や鳥類・両生類・爬虫類・魚類などの脊椎動物に存在する臓器の一つである。ヒトの場合、腹部の右上に位置し、ほぼ右肋骨の下に収まっており、頭側(上方)には横隔膜が存在する。ヒトでは最大の内臓になる。体調の維持に必須の機能が多く、特に生体の内部環境の維持に大きな役割を果たしている。
肝臓は非常に機能が多いことで知られ、代謝や排出、胎児の造血、解毒、体液の恒常性の維持などの役割を担っている。また、十二指腸に胆汁を分泌して消化にも一定の役割を持っている。
働きは分かっているだけで500種類以上あるとされ、肝機能を人工装置によって全面的に補うことは出来ない。そのため、肝臓の摘出および機能低下時の対処としては、肝細胞と人工装置との組合せによる、ハイブリッド型の人工肝臓が主流となっている。
一方、臓器の中での部位による機能の分化が少なく再生能力が強い。そのため、一部に損傷があっても症状に現れにくい。自覚症状の少なさから、「沈黙の臓器」と呼ばれている。正常のヒト成人の肝重量は体重の約1/50であり、1.0~1.5kgになる。
肝臓は肝動脈と門脈の2つの血管により栄養を受けている。血流は中心静脈、肝静脈を経て外へ出てゆく。肝動脈は、下行大動脈から分岐した腹腔動脈の枝である総肝動脈が固有肝動脈となり右肝動脈と左肝動脈へと分かれて内部へ入る。
肝臓から出た総胆管はファーター膨大部の手前で膵管と合流して、十二指腸へと繋がる。なお、総胆管の途中に胆嚢がある。食物の消化を助ける胆汁酸を生成し、胆管・胆嚢から十二指腸に胆汁として分泌する。ヘムの分解物である間接ビリルビンをグルクロン酸抱合により直接ビリルビンにして胆汁として分泌する。
肝臓は血液中のグルコース濃度に応じて、血液中のグルコースをグリコーゲンとして貯蔵したり、貯蔵したグリコーゲンをグルコースに変換し、血液中へ放出したりすることにより、その濃度を一定に保っている。筋肉などから血流により運ばれてきた乳酸からのグルコースの再合成(コリ回路)を行うことができる。
肝臓は脂質を分解しエネルギーを作り出すことができる。胆汁酸はコレステロールの代謝産物である。コレステロール(ステロイドホルモンである性ホルモンや副腎皮質ホルモンの原料)の生合成を行っている。コレステロールの大部分は肝臓で合成されている。また、肝臓はアミノ酸からアルブミンやフィブリノゲンなどの血漿タンパク質を合成している。
牛や豚・鶏などの肝臓はレバーと呼ばれ、食材とされている。世界三大珍味のひとつフォアグラはガチョウやアヒルに大量のエサを与え肥大させた肝臓である。また魚類(アンコウ等)・軟体動物(イカなど)の肝臓も食用にされる。なお、これらに大量に含まれるプリン体の影響により、多量の摂取は痛風などの原因になる。また、ビタミンAが大量に蓄積されている北極熊やイシナギの肝臓、テトロドトキシンが蓄積されているフグの肝臓のように、食べると危険なものもある。この他、牛や豚の肝臓は消化酵素を加えて加水分解され、肝臓水解物として二日酔いや慢性肝疾患治療の医薬品原料となっている(例:ウルソデオキシコール酸)。
肝臓の組織は肝小葉と言う構造単位が集まってできている。小葉の間(小葉間結合組織)を小葉間静脈(肝門脈の枝)、小葉間動脈、小葉間胆管が走っている。肝小葉は直径1~2mmの六角柱の形をしている。中心静脈という小静脈が中軸部を貫いている。肝細胞は中心静脈の周囲に放射状に配列しており、ブロック塀の様に積み重なり、1層の板を形成している。その間を管腔の広い特殊な毛細血管が走っており、これを洞様毛細血管(あるいは類洞)という。この毛細血管は小葉間静脈と小葉間動脈の血液を受けて中心静脈に血液を送る。
肝細胞板の内部で、隣り合う肝細胞間には毛細胆管というごく細い管が存在する。肝細胞から分泌された胆汁はこの毛細胆管に分泌され、小葉中心部から小葉間胆管に注いでいる。 また、ヒトの場合、肝臓の細胞は核を2つ持つ多核細胞であり、このことが肝細胞の再生力が高い要因とされている。
最後に肝(臓)に関することわざと四字熟語を紹介しよう。
*ことわざ
荒肝を抜く 生き肝を抜く 肝胆相照らす 肝胆を砕く
肝胆を披く 肝脳、地に塗る 肝が大きい 肝が据わる
肝が小さい 肝が太い 肝っ玉が据わる 肝っ玉が太い
肝に銘じる 肝を砕く 肝を消す 肝を据える
肝を漬す 肝を冷やす 仕上げが肝心 心肝に徹する
心肝を砕く 心肝を寒からしめる 度肝を抜く 肺肝を砕く
*四字熟語
肝腎肝文 肝胆胡越 胆相照旨 肝胆楚越
肝脳塗地 錦繍心肝 虫腎鼠肝 竜肝豹胎
竜肝豹胎
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