春はすぐそばに
夕方のニュースで、梅が開花した、と話していた。先週末の気温が最高7°・最低0°だったのに対し、今日の気温は最低2°・最高15°。今週から暖かくなる、という予報通りに、もう分厚い服は着られないのではないか?というほどあったかい。鳥の鳴き声もよく聞くようになった。春が、近付いている。
去年の冬から春になる間、僕はただただ退院することを願っていた。周りは年寄りばかり、楽しく話せる人は看護師さんと先生なのだが、忙しくてそんなに構ってくれない。友達は仕事しているし、家族は面会には来るものの、すぐ帰ってしまう。孤独だった。悪化した病状が中々良くならず、何度か涙したこともあった。光が照らされることを、凍った心が暖かくなることを、”春”を待ち続けていた。そう、あの時僕は春を待っていたんだと思う。
そんな時、Instagramで繋がっているtunaさん(竹崎彰悟さん)がある曲をストーリーに上げていた。藤山拓さんの「春は」という曲だ。何となくYouTubeのリンクを押してみた。最初に流れてきたのは、リズムを刻むベースの音。続けてアコギとスネア(ドラム)の音が加わる。少しワクワクしながら聞くと、エレキギター、キーボードの音も加わって、何だか冒険しているみたいな曲だなと思った。そして、心を奪われたのは「春はもうすぐそばに来てるよ」という歌詞。何度もリフレインされるこの歌詞に、優しくて力強いものを感じた。「生きていてほしい わがままかな 乾杯をしよう 春はもうすぐ!すぐそばに来てるよ」という歌詞で、僕は彼のことを思い出した。その話は別の記事に書いているのだが(👇)、この歌詞で涙が溢れた。
最初は「生きていてほしい わがままかな 乾杯をしよう」なのに、最後は「そばにいてほしい わがままだな さよならをしよう」に変わり、さらに涙が止まらなくなってしまった。生きていて欲しかった彼と、さよならをしなくてはならない。辛いことも、苦しいことも沢山あったけど、春はもう、すぐそばに来てる。彼のためにも、自分のためにも、”春”を迎えに行かなくちゃ、と決心した。悲しいことだけじゃなくて、嬉しいこともこれから沢山あるよ、前を向こう、と自分に言い聞かせた。それから20日後くらいに、ようやく退院することができた。
春は来る。僕はまた、一歩ずつ前へ進んでいく。時々、後ろを振り返りながら。苦しいことや悲しいことも全て背負って、生きていく。