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喪失体験後の「心の地図」を持つ(前編)

加害者のグリーフについて考え発信する理由


前回、交通事故加害者にも失うものがあるのではないか、というお話をしました。

私自身、5年前に死亡事故を起こしてしまってから数年、心にぽっかりと穴が開いたような、地面が抜けてしまったような、強い不安に襲われました。喜怒哀楽や事故に対する考え主張が、くるくる変わっていました。

でも、そうなる原因は何なのか、いまの私はどういう状態なのかわからず、自分の取り扱いに困りました。

事故から5年、裁判や刑務所への服役など色んな経験をして、少しずつ整理がついて、納得をし、受け入れる事ができています。そして、落ち着いてきた今、改めてあの時の私の心はどうなっていたのだろうか、と疑問が湧きました。

先日、「グリーフケア」に出会い、「もしかしたらあの時の私の状態はグリーフケアの知識で説明できるのかもしれない!」と思いました。

もし本当に当てはまるのなら、他に同じ経験をして心に傷を負った人達の立ち直りに少しは役に立てるかもしれない。なので、これから、グリーフケアの勉強をしながら、そして自分の体験と照らし合わせながら、当時や今の心の状態の解明をしていきたいなと思います。そして、それをできるだけ包み隠さず公開していきます。

これは私にとっての答え合わせであり、心の整理整頓の記録でもあります。

交通事故の加害者だからといって、みんながみんな同じ気持ちになるとは限りません。というか、それは絶対にありえません。でも、同じ加害者という立場に立たされたもの同士、共通して感じることも多いのかなと思います。これを読んでいる事故加害者となってしまい、心に傷を負ったと感じている方が、少しでも「その気持ちわかる!」「私だけじゃなかったんだ!」と感じて、心の整理を進め、立ち直る一助になれば幸いです。

読者のみなさんへのお願い


交通事故加害者のグリーフケアについて研究をしている人を私は知らないので、正直、この仮説が正しいのかわかりません。これから勉強しながら検証していきます。私は心理職ではないずぶの素人であり、あくまで実体験をもとに発信しています。だから、専門家から見たら、それは誤った解釈だ!という事もあろうかと思います。

また、客観的で公平公正な意見をと気を付けていても、どうしても加害者という立場上、偏りのある意見になることもあるかもしれません。また、同じ加害者という立場でも感じ方や考え方は様々です。

なので、「それはちがうんじゃないか」とか、「こういう見方や考え方もあるのではないか」という意見は大歓迎です!できるだけ多くの皆さんと一緒に考えて、それを共有していけたらいいなと思います。その意見のひとつひとつが、私を含め、多くの加害者の立ち直りのヒントになるかもしれません

ただし、単なる加害者批判や、誹謗中傷はお控えください。あくまで建設的な意見をお願いします。温かく見守るか、スルーしてくださると助かります。

ご理解、ご協力のほど、よろしくお願いしますm(__)m



では、お待たせしました。加害者のグリーフケアについてかんがえていきましょう。

書籍『大切な人を亡くしたあなたに知っておいてほしい5つのこと』


今日から、こちらの本を読みながら交通事故加害者のグリーフについて考えていきたいと思います。

本の内容を紹介する、というより、内容の中で、私の加害者の喪失体験とその心の状態を説明するのにぴったりだ!とか、気になる!と思ったところをピックアップして、実体験も併せて紹介していきたいと思います。グリーフケアや、本の内容に興味を持たれた方は、ぜひご自身でも読んでみてください(※ちなみに、この本を買ったからといって私には1円の収益も入りません。ご安心?ください。)

今回取り上げる文章:『喪失体験後の「心の地図」をもつ』

道に迷って、私たちは不安になるときがあります。その不安を大きく分けると、2つのものがかんがえられます。
1つは『自分はいったいどこにいるのか』。
もう1つが『どの方向に向かって進めばいいのか』というものです。

井手敏郎著『大切な人を亡くしたあなたに知っておいてほしい5つのこと』p27より

まさに!
私は事故を起こしてしまってから、ずーーーーーーーーーっっとこの気持ちを抱いていました。

1.『自分はいったいどこにいるのか』


先ほども述べたように、事故発生後、心の中はぐっちゃぐちゃで、自分で自分の事がよく分かりませんでした。常に天使と悪魔が葛藤していて、自分はどうしたいのかわからない。

そして、事故の発生日から警察による取り調べが始まりましたが、そこから裁判を経て刑務所に行くまで3年かかりました。さらに刑務所収監から2年。長い。刑事事件を起こしたのは初めてで、周りにもそういう経験をした人がいないので、いつ、とか、どれぐらいでという目安がありませんでした。捜査や裁判は驚くほど進むのが遅い。大晦日に近づくと「今年も終わらなかった。来年は終わるんだろうか。」とため息。
いったい今どの辺まで来てるんだろう。あとどれぐらいでゴールにたどり着くんだろう。っていうかゴールって何?一生たどり着ける気がしない、と不安に。心理的にも、刑事事件の手続き的にも、目安となる前例が公開されていないので比較ができず、自分がどこまで来ているのか、いつまで続くのかわからず不安でした。

心理的迷子

被害者のために自分の過失をすべてを認めて告白し謝りたいという善良で理性的な天使の自分と、どうなるかわからない(もっと具体的に言うと刑務所に行くのが怖い)から知らないふりをしようとか、加害者って責められて可哀そうって同情されるように振舞おうとする打算的で本能的に自分を守ろうとする悪魔の自分が常に戦っていて、日によって、時によって天使が出たり悪魔が出たりして、罪を認めたり認めなかったり、自分でもどうしたいのかわかりませんでした。天使の声に従うべきと頭では思っていても、実際にはまったく逆の事を取り調べで口走ってしまっていたりとちぐはぐでした。そうかと思えば突然スイッチが切り替わって、何の感情も伴わない涙は流れるし、壁をぼーっと見てるだけで動けないし。パニック状態。

私は何がしたいんだろう……。

この状態、いつまで続くんだろう……。

刑事事件の手続きの迷子

そして、現実社会で進行することも先が読めませんでした。

被害者や遺族にはどう対応したらいいの?葬儀に行く?謝りに行く?恨まれてるよね。怒られるよね。正直、会いたくないなぁ、怖いなぁ……。

取り調べって、あと何回あるの?いつ終わるの?これからどんな捜査をするの?何を見せられるの?狭い部屋に何時間も閉じ込められて「あなたのせいで死んだ人がいるんだからね」って尋問されるのが辛いよ。

弁護士っていつ頼めばいいの?弁護士の知り合いなんていないけど、どうやって探すの?誰がいいの?お金どれぐらいかかるんだろう。

裁判ってどんな風なんだろう。ドラマの世界。想像もつかない。怖いなぁ。

やっぱり最終的には刑務所に行くのかなぁ。刑務所での生活こそ想像つかないよ。ただただ不安だ。もしそうなったら仕事や家族はどうなるんだろう。


いつまでこんな生活が続くんだろう。

きっともう幸せな日常なんて戻ってこないんだ。

わからない事が多すぎて、真っ暗な宇宙の中に放り出されたような不安でした。ほんとうに、わたし、どこに迷い込んだのって感じでした。


長くなってしまったので本日はここまで。

次回は、『どの方向に向かって進めばいいのか』についての私の実体験と、
どうすればこの迷子の不安から抜け出せるのかについて考えていきたいと思います!

最後までお読みいただきありがとうございましたm(__)m
誤字脱字など、寛容なお気持ちでスルーしてくださると幸いです。


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