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外国人労働者政策、先行する韓国、遅れる日本

日韓の比較で気になっていたのが外国人労働者対策だ。もちろんなかなか理想的な政策はないが、積極的に生かそうとするのか、管理し、抑えようとするのかで大きく姿勢は変わってくる。


以下の本の中で、89から143pまでを要約してみた。この本は全体的に韓国を肯定的に見ているが、それでも日本の制度に課題が多いことがわかる。

韓国での外国人労働者受け入れの歴史と雇用許可制

韓国における外国人労働者の受け入れは、経済成長や人口動態の変化に伴い発展してきた。1980年代から1990年代初頭にかけて、韓国の急速な経済成長により、労働力不足が深刻化した。

非公式な流入


この時期、多くの外国人労働者が非公式に韓国に入り、主に建設業や製造業などの3D職種(危険・困難・汚い)で働くようになった。

しかし、これらの労働者は合法的な地位を持たず、しばしば劣悪な労働条件や賃金搾取の問題に直面した。この状況を改善するため、2004年に「雇用許可制」(Employment Permit System, EPS)が導入された。

政府が一元管理する雇用許可制


雇用許可制は、外国人労働者に対して合法的な雇用機会を提供し、韓国政府が労働者の入国から就業までを一元管理する制度である。

雇用許可制の導入により、外国人労働者は韓国での労働者としての地位が法的に保障され、韓国の労働市場における需要に基づいて、政府が認めた一定数の外国人労働者が受け入れられるようになった。この制度は、特に低熟練労働者を対象としており、外国人労働者が韓国で一定期間就労した後、母国に帰国することを前提としている。

雇用主にも一定の責任


また、雇用許可制は、雇用主に対しても一定の義務を課し、外国人労働者の権利保護を目的としている。これには、労働条件の遵守、適切な住居の提供、そして社会保険の適用が含まれる。

総じて、韓国における外国人労働者の受け入れと雇用許可制は、経済的ニーズに応えるために設計されたものであり、外国人労働者の権利保護と労働市場の安定化に寄与している。

日韓の違い


韓国と日本の外国人労働者受け入れの歴史と政策を比較すると、いくつかの重要な相違点が見られる。

歴史的背景


韓国と日本の外国人労働者受け入れの背景は、それぞれの経済発展と人口動態に深く関わっている。
韓国では、前述したとおり。

一方、日本では、バブル経済期の1980年代後半から1990年代初頭にかけて、労働力不足に対応するために外国人労働者が増加した。

両国ともに、当初は外国人労働者の受け入れに対して法的枠組みが整備されておらず、非公式な形での労働者の流入が主流だった。

政策の違い

韓国は2004年に「雇用許可制」を導入し、外国人労働者に合法的な就労機会を提供する制度を確立した。

一方、日本では、外国人労働者受け入れ政策として「技能実習制度」が1993年に導入された。

この制度は、日本の技術や知識を途上国に移転することを目的としていたが、実際には低賃金労働力の供給源として利用されることが多く、労働者の権利侵害が問題視されている。

韓国の雇用許可制は特に低熟練労働者を対象としており、韓国の労働市場のニーズに基づいて外国人労働者が受け入れられている。

日本では2019年に「特定技能制度」が導入され、一定の技能を持つ外国人労働者が日本で就労できるようになったが、依然として技能実習制度に依存する部分が大きい。

労働者の権利保護で見直し迫られる日本


日本では、技能実習制度における労働者の権利保護が不十分であり、過労や低賃金、劣悪な労働条件が問題となっている。このため、国際的にも批判が高まり、制度の見直しが求められている。

日韓の比較の中で、頻繁に取り上げられる外国人労働者対策。少子化に悩む韓国はやむを得ず進めている面もある。それでも日本の対応の遅さが気になる。



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五味洋治 Yoji Gomi
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