言葉の宝箱 1039【わるいほうに考えてどうなるというのです。為すべきことを為したら、あとは天にまかせるしかないでしょう】
『巣立ち お鳥見女房⑤』諸田玲子(新潮社2008/11/20)
嫡男久太郎の婚姻の日が近づいていた。
相手は珠世の夫、
伴之助に苛酷な陰働きを命じた前老中水野忠邦に連なる家の娘、鷹姫さま。祝言の日までの心労、婚礼の場での思わぬ騒動、
そして次男久之助も人生の岐路を迎える。
家族が増えた矢島家では、喜びも増え、苦労も増える。
姑となった珠世に安寧の日々は訪れるのだろうか。
人情と機智にホロリとさせられる、シリーズ第5弾。7話連作短編集。
第一話ぎぎゅう, 第二話巣立ち, 第三話佳き日,
第四話お犬騒ぎ, 第五話蛹のままで, 第六話安産祈願, 第七話剛の者
・「お姑さまは、
どうしてそんなに、よいほうにばかり考えられるのですか」
「わるいほうに考えてどうなるというのです。
為すべきことを為したら、あとは天にまかせるしかないでしょう。
悩んで詮ないことなら悩むだけ徒労。
愚痴を言ったり嘆いたりすれば、
ようなるものまでわるうなってしまいます」
「おっしゃることはわかります。
なれど、わたくしはお姑さまのようにはなれません。
とても、そのように落ち着いては ……」
「わたくしも同じ。落ち着いてなどいるものですか。
あたふたして、やきもきして ……
だからこそ恵以どの、わたくしはね、いつも笑顔でいたいのです」 P224
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