言葉の宝箱 1077【愚痴の種はつきないんですよね】
『たからもの(深川澪通り木戸番小屋⑤)』北原亞以子
(講談社文庫 2015/10/15)
江戸、深川澪通りの木戸番小屋に住まう夫婦、笑兵衛とお捨。二人のもとには困難な人生に苦しみ、挫けそうな心を抱えた人々が日々訪れる。傷ついた心にそっと寄り添い、包み込む。その温かさに癒され、誰もが生きる力を取り戻していく。人生の機微をこまやかに描く、シリーズの最終巻。
『第一話 如月の夢』『第二話 かげろう』『第三話 たからもの』
『第四話 照り霞む』『第五話 七分三分』『第六話 福の神』
『第七話 まぶしい風』『第八話 暗鬼』8話連作短編集。
『第四話照り霞む』は
・今年になって、また一人友達をなくした。
他界したのではない。つきあいを絶ったのである P111
で始まり、こんな会話が差し込まれている。
・「可愛い盛りでしたけど、考えようですよ。
十七、八で逝けば、せっかくここまで育てたのにと嘆くでしょうし、
嫁いでからあの世に行けば、
子供の顔が見たかったろうにともっと涙が出ますよ、
きっと、愚痴の種はつきないんですよね」P138
*「愚痴の種はつきない」
諭すのでもなく、励ますのでもない。
自分の経験をさりげなく告げ、思いを語る。
大人の対応とはこういうものなんだと思う。
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