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言葉の宝箱 0123【あれば便利、というのではなく、それがないと生きていけない、という見方で決める】


『北の川から』野田知佑(新潮文庫1997/10/1)

これぞ断捨離という世界が描かれている

 ・川旅の生活は「切り捨てる」生活だ。
いつも何かを捨てている。生活に必要なもの以外は持ち歩く余裕がない。
あれば便利、というのではなく、
それがないと生きていけない、という見方で決める。
身のまわりの品物が少なくなり、
生活が簡素になると、感情と思考が単純になるところがある。
子供の頃のように一日に考える事柄が五本の指で足りる生活だ。
これがとても気に入っている。こんな生活をしたいから、ここに来たのだ。いま、一番大切なのは、
誰にも邪魔されずに、この静かな生活を続けること。
ワイザツなもの皆無の濃密な時間を過ごすこと。
一日二四時間を完璧に自分のルールで生きること。
生活のすみずみに至るまで、自分が支配して生きることだ P18

・この村の大人たちは子供をいつも放っておく。まったく構わない。
しかし、遠くからよく見張っていて、
いざという時はピシリと注意を与える。
この「距離」が見ていて好ましかった。
子供を可愛がる、というのは甘やかすのとは違うのだ P31

・省略能力はその人の知性に比例する P48

・判るような気がするよ。
忙しいといっても自分が決めたものではなくて、
他人が決めた忙しさだものな。
他人に自分の人生をかき回されるのはたえられんだろう P111

・善意、慈善を施す側と
それを受けざるを得ない立場にいる側との微妙な食い違い。あつれき。
人に何かをしてやる、というのはとても難しい。
無神経な人間がこれをやると、相手を傷つけるだけになるし、
神経を使ってやろうとすると、
いつの間にか相手を赤ん坊扱いし、ネコナデ声と作り笑いになってしまう。一人の人格をもった大人に対して、これほど無礼なことはなかろう P128

・自分の息子を、修行してこいと世の中に放りだす父親も偉い。
今の日本では大人が子供に失敗したり、
試行錯誤して成長していくのを許さない。
いちいち小さなことに口を出して子供に考える余裕を与えない。
こうして判断力のない、無能な人間ができていく。
Nはこれから何百回と失敗をくり返し、
ヘマをやりながら成長していくだろう P147

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