NCU・2日目 2017/09/15

NCUとは「脳血管障害術前および術後急性期の脳神経外科系重症患者を収容している集中治療室」になるので厳重に管理されている。予断を許さない状況にある重篤な患者の容態を逐一24時間に渡って管理するという名目と二次感染、院内感染を予防する為に外的要因を極力遮断するという目的もある。

であるから当然面会時間も制約されていて基本的に何か特別な重要な用事や用件がない限りは面会時間は午後15:00〜15:30と決められている。面会申請にあたっては面会開始時間である15時の前にNCU病室前の面会人待合室で面会希望要請シートに当日面会する代表者の氏名・性別に面会希望人数を記載して提出ボックスに挿入しておく。ちなみに一度の面会にあたり面会可能人数は3名までとなり、それ以上の面会希望者がいる場合には交代で各自時間内に入れ替ることにより対応し、病人に接するのは常に3名以下をキープするように厳密にコントロールされる。そして面会人は基本的に親族、近親者のみと限定され中学生以下の12歳以下の小児の面会は基本的に感染の問題から拒絶さている。入室の際にはマスク着用義務があり、手指グローブは任意であるが速乾性消毒液であるウェルパスでの手指消毒の後に入室という段取りとなる。

9/14(木曜)にも面会に訪れたが母親は麻酔からの覚醒なく深く眠り続けていた。
看護師と看護師長から意識のない若しくは意識の希薄な患者には近親者からのお声掛けが一番のものなのですよ、カンフル剤なのですよ、みたいなことを促されて母親の手足をさすりながら起きるように、目覚めるようにと声を掛け続けていたように思う。
通常は1日経った今頃には覚醒してるはずだという説明であったけれども母親は今までの疲れを癒すかのように眠り続けていた。通常がそういうものだと説明されるとこの状態が異常なのであればもう目を覚ます可能性が低いのか、それともたまたま麻酔が効き過ぎてまだまだ眠り続けているのかその判断が今は難しい。不安だけが募り、増殖して胸がざわざわとするものの我々にできることは何もなく、ただただ母親の手足をさすったり声を掛けたりするだけだった。

9/15(金曜)の面会時間15時15分前くらいにNCUへと伺う。

看護婦長と担当執刀医から母親は麻酔から覚醒したとの報告を面会前に受ける。
どんな感じに母親は変わってるのかが気になる。
説明によれば、手術時の気管内挿管を抜管する際に喉・咽頭部を若干損傷して炎症を起こしているので今現在は非常に声が出づらく喋りにくくなっているということ。その他の手術の経過としては良好で頭蓋外ドレナージによって血液もほぼほぼ取り除かれつつあるということ、などの説明を簡易に受ける。

面会開始時間が待ち遠しくなる。
何か喋ってみて、と促すも喉の舌骨が巧く動かしにくいらしく発音らしい発音ができない様子である。手足に温もりを感じる。浮腫んでる印象も大きい。身体はまだベッドにのぺーっと鮟鱇のようにへばりついた三次元というよりも二次元が少し盛り上がったくらいの見た目である。自分から言葉を発することはできないみたいだけれども手足を握って「動かしてみて」と伝えれば、その握った手なり足なりを動かしてくる。左右の手足を動かすように指示するとどれもがピクリピクリと動きはするので麻痺などの問題はなさそうである。
この少しのことなのに彼女の疲労感は相当のもののように映る。
息が荒くなる。ぜーぜーぜーぜーと言い出す。
今朝目覚めたところなのだから、と取り敢えずは昨日までの不安は払拭できたので安堵する。昨日の何の反応もない面会時間の30分は異常に長く感じられたけれども、今日の反応の多彩な状態を目の前にすると面会時間の30分の短さに嘆く。
明日もまた来る、と伝えて退室する。

明日9/16(土曜)は本来なら母親と一緒に馴染みの天麩羅屋で夕食をとる手はずであった。代わりに妻と次男坊と一緒に伺い天麩羅屋の女将に事の顛末を伝えて驚かれるも少しの勇気と優しさを与えてもらう。

我々は生きている限り、ひとりではない。


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