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長い距離を飛ばす手すり ~取付不可能?の救世主


手すりがほしいところに下地が見つからない。これ、現場調査では結構ある話である。特に収納が絡む場合と、古めの日本家屋の場合。

前者は柱の間が扉だったりするので手すりをつけると開閉に難がある、ということになるし、扉の両端にしかそもそも下地がない、つまり場合によっては1.8m先まで金具を止められるところがない、という問題。
後者は、真壁というつくりのため、柱が見えてはいるんだけど、その間隔がそもそも1.8mであり、その間が塗り壁である場合。塗り壁は竹小舞という下地だったり、ラスボードという左官用ボード下地だったりいろいろな仕様があるのですが、どれも手すり金具を直接固定するには強度が足りない。


なので、柱から柱まで、出来ることなら手すりを飛ばしたい。
そうなると、手すり棒の強度の話になるのである。

手すり棒の太さは直径32mm、もしくは35mmが多いことは以前ちょこっと書いた。そして以前は45mmの手すり棒があったことも。


使いやすさを優先して、こういった基準は定めているのだが、細身になれば荷重がかかったときにたわみも出るし、曲げ強度も低下する。なので、木の集成材手すり棒の場合、φ32mmでは600mm、φ35mmでは900mmの金具間隔が相場となっている。

でも、このような場合は木では保たない。そんな場合は、福祉用具貸与の手すりでの代替を考えるか、こちらを使うことを考えるのである。


noteにもアカウントのあるマツ六さんの、襖用脱着手すり。


これなら、6尺1820mm(1.8m)の金具間隔でもいける。

ただし、要注意の部材でもあります。一番の問題は、重いこと。

手すり棒の重さは、木製手すりなら長さ1.8mでおおよそ1.2kgくらい。でも、この襖用手すりは3.6kg、おおよそ3倍くらいになる。
なぜなら、これ木目の樹脂被覆のついている、鋼製の手すりだからだ。そりゃ強度も出るよね。そしてこれが壁に固定されているのなら、まあ問題はないのだけど。

襖用手すりというのは、収納部に掛かるので、脱着できる金具との組合せが標準仕様なのだ。ということは、必要なときに結構重いこの棒を、取り外ししなくてはならない。それも両端のラッチを外すことが必須なのだ。真ん中で支えつつ一人で、は難しい。さすがにこの動作、高齢の方にはお勧めできない難易度レベルなので、取り外しはご家族でお願いします、という前提で取り付けることが多い。

でも、例えば押し入れを横切ってトイレまで行かねばならない場合などは、これで結構重宝して使っている。


さて、ココまでが表メニューです。

コンプライアンス上、メーカー関係の方はこちらで退出を願います。心臓に悪いよ。


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以下、裏メニュー。こっそり息を殺してお読みください。


実際の現場には、押入れ以外にも1.8mを飛ばしたい場合は結構多い。
先に書いた、真壁の壁面などである。

その場合、こちらはメーカーが使用を認めていない付け方で致し方なく対応せざるを得ないケースも、ときどきある。PL法適用外ですね。

例えばこういうケース。

真壁の柱間を中間金具なしで飛ばす

この場合、木製手すりなら中間ブラケットが必要になるので、補強板を設置してそこに金具を効かせる事になりがちである。でも手間と、空間の広さなどを考えると、一本で飛ばしたほうが価格は下がるし、空間も広く使える。
なので、こういった場合にその鋼製手すり棒を使って、シンプルに処理している。
なおマツ六さんには、1.4mまで飛ばせる手すり棒というものもあり、適用可能な金具も少し多いのだけど、色や手触りが個人的に許容できないので、我が社は頑なにこちらの襖用手すりを使っているのだった。


奥が鋼製、手前が木製 それを継いでいます

こういう連続した納まりの際も、手触りがあまり変わらないことは大事。襖用ならその違いが消せるのです、流石に温度感は違うけど。


なお、スパン(金具間距離)が大きくなると、同時に利用する人数も物理的には増やせてしまう(並んで握る)のだが、在宅介護向けの自宅の手すりであれば、それは先方に確認しておけばその可能性を外して単独利用で検討ができる。そういう理屈で保つ保たないの判断をやっています。


また、この棒を使う場合、金具とのマッチング、ネジ止めが要注意になる。なぜなら棒が中空だから、そして鋼製だからだ。棒を木口側から固定するタイプの金具は使用できず、側面から金具に固定するタイプしか使えない。
そして、鋼材にネジを効かせるには、そのネジの、谷部分より大きく、ネジの山より小さいサイズで厳密に下穴を開けておく必要がある。そこで油断すると、止めネジが途中でネジ切れて、途方に暮れることになるのであった。なりました。なんとかしたけど。


さて、この部材をどういうところで使うか、より冒険するとこうなる。

縦にも使えるのでは?

柱のように縦使いも、強度計算上は出来るはず。ただ、そこに横の手すりをぶつけるのは正直どうなのであろうと思いつつ、下穴を計算して開けたうえでT字のジョイントを取り付け、そこに横の手すりを設置すると、手すりが付けられないと思われた、引き戸の引き代部分も手すりでカバーできるのだった。
なおこの形状、貸与品手すりでもやれますが、介護保険の点数が足りないときなど、置き換えざるを得ないケースで、こういう解決法を取ることがあります。


さらに。

無茶しやがって・・・

縦と斜め、どちらもロングスパン対応の襖用手すり棒。斜めは下側で2ヶ所ブラケット止めしてキャンティレバー(片持ち)で跳ね出し、それを縦手すりと斜めに継いでいます。見えないけど下方は木製手すりに接続し、斜めの手すりが連続して下階まで。

なお、こちらの家は解体済なのですが、正直お役目を全うしてホッとしているところもある。形状、性能ともにあまりお薦めはできないものの、意外にガッチリと組めていて、最後まで使えていたとのこと。


なお我が社は常に、手すりを取り付けたときは全体重をかけて試用チェックをするので、そのときに怪しい手すりは変な挙動をして教えてくれる。

なので、メーカーさんが見たら戦慄するかも知れない、他の会社さんでは気絶するかも知れないこういった使い方、こちらはじっちゃんの名にかけて、もといおっさんの重み(0.08t)に賭けて、利用者さんに引き渡しているのであった。


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てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)
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