古い家、本当に手すりが付けにくい? ~そのための金具と施工のくふう
「古い建物だから、手すりは付けられないかも・・・」
訪問調査で、このようにおっしゃられる利用者さん、けっこういらっしゃいます。
でも、逆です。簡単なんです。
和風の間取りの建物であれば、古い建物=真壁造り、です。
真壁というのは、柱が見えていて、その間の壁が一段引っ込んだ形の建物のつくりのこと。在来木造住宅では、塗り壁が廃れるのと軌を一にして、徐々につくられなくなりました。
いまの木造住宅のほとんどは、大壁造り=柱が石膏ボードなどで隠れています。
ということは、昔の建物は、手すりをつけるための強度を出すのに必須である、壁の中の柱や間柱探しの手間がいらない。手すり屋としては、準備作業が簡単なのです。
たとえば、廊下のほうから押し入れをまたいで、反対側まで移動するための手すりを組むとこうなります。
ポイントは、柱の形状にあわせて金具を選ぶこと。ホームセンター等にはあまり置いているのを見ない、スリム系のブラケットがここでは活躍します。
また、押し入れ用の脱着手すりについては、以前こちらで書いたので参照していただければ。
また、居室は広いのでこれで問題ないのですが、廊下の場合はこういう付け方をすると、廊下が狭くなった感じを受けるので、もっと壁側に取り付けできないの?と言われがちです。
そんなときは、チリどめとか、入隅エンドと呼ばれる金具の出番です。
これを使えば、真壁の廊下なら手すりを壁面の方に追い込めます。
歩行器での移動も考慮する場合など、ちょっとでも廊下の有効幅を確保したいときなど、有効です。
でも、このかたちにすると、柱のところで手すりが途切れてしまいます。
この現場写真だと、ちょうどコロコロ粘着ローラーが下がっているところですね。でも、ここで金具が出っ張ることを良しとしないケースもあります。
ちゃんとあるんです。そういうところ用の金具。通しブラケット。
通しブラケットの施工例。こんな感じに仕上がります。
ただ、握ったままで移動すると、指先が金具に当たるので実用性はちょっと足りないですが、これは致し方なし。上から手を載せて、滑らせる用途向きですね。ハンドレールという使い方。
ただ、ドアの周囲だとこう上手くは行かないこともあります。
開閉の際に手すりとドアが当たる、これはよろしくない。
なので、そういったところは補強板の厚さを、壁のチリ(引っ込み寸法)と揃えて、こうやって組んだりします。
補強板は両端の柱にガッツリ固定、でもそれだけだと壁から浮き上がる(というより塗り壁、平らに見えてそうでもないのです)こともあるので、プラグを打って板を壁側に引き寄せることもあります。
ほとんど強度には貢献しませんが、壁から浮き上がって見えていると不安ですからね。
あと、特に心配されるのがお風呂の手すりですね。タイル貼りのところ。
真壁でつくられる頃の建物だと、タイルは湿式工法、それもいわゆる団子張りなのです。タイルの裏に、お団子のように接着モルタルをくっつけて、下から一枚ずつ丁寧に貼っていく方法。かなり高度な職人技です。
でも、これはちょっと注意が必要。
こういう施工方法なので、下地にプラグアンカーは打てるのですが、タイルの目地がバッテンになっている付近は、貼り付けモルタルの一部が回っていないことが、多々あります。
なので、こちらは原則としてそういった現場では、手すりのネジは片側4ヶ所打ちの製品を選んで、1ヶ所が不良でもしっかり支えられる冗長性を確保しつつ、可能ならそのネジ位置がタイルの交点近くにかからないように、レイアウトを工夫しております。
でも、団子張り用のタイルの寸法は110mm角、浴室用の手すりは100mm単位での長さ設定であることが多いので、綺麗にレイアウトしようとしても、微妙にずれていってしまうのが悲しいところ。なので、ネジ位置がちょうど空間にヒットすることも、あります。
そういったときのために、こういったケースでの固定用プラグはこれを使います。これなら、タイル裏の空洞を飛ばして、下地モルタル等にちゃんと効かせて固定できるので。
もちろん、防水はネジ穴の周りに変成シリコンシーリングをガッツリ効かせます。念には念を、の心ですね。
というわけで、古い家でも手すり、しっかり取り付けできますよ!のお話でした。