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壊しが不要のスワレット ~和式便器のお安い改修ワザ


最近は少なくなってきたのだけれど、介護保険のなかで認められている改修のなかで、洋式便器等への便器の取替え、という種類の工事がある。少なくなってきた理由というのは、徐々に和式トイレのあるお宅が少なくなってきたからなのだが、それでも年に何回かはそういった工事のご相談をいただく。

一般的には、

特定福祉用具の補助便座が使われています

こんなふうに、一段上がったところにあるトイレの上に、特定福祉用具(介護保険で購入後に給付が受けられる福祉用具)である腰掛便座に該当する、和式便器の上に置いて腰掛式に変換するものを利用したり、それに貸与品の手すりを組み合わせて対応されていたりするのだが、なにぶん掃除が大変、さらにウォシュレットなどの、洗浄機能付き便座を導入したいという要望になると、予算がある場合は、ではちゃんとやりましょうか、ということになる。

床を壊して下げたり上げたりして

配管をガッツリやり直して、床の下地材の間に断熱材も入れたりして

下地合板をバチッと

下地を作り直したら床のクッションフロアと壁天井のクロス貼りをやって、

スッキリしました

こんな感じで、よくある洋式トイレになります。


でも実はこれ、介護保険で使える20万円枠の中で対応するのはまず難しい。選ぶ便器や便座にもよりますが、確実に足が出てしまいます。


なので、予算をできるだけ下げて和式から洋式にしたい、という場合、次善の策としてお勧めするのが、このスワレット【CS501:TOTO(株)】というロングセラー製品なのです。
これなら、なんとか介護保険の範囲で対応できます。壊してつくりなおす費用って、馬鹿にならないのですよね。これを使うとそのコストが全部かからない、そこが素晴らしい。

トップ画像のやつが、それとウォシュレットのセットです。今は廃盤となった専用手すりまでついています。この手すりがなくなったのは残念ではありますが、スワレットそのものが廃盤になっていないだけ、良しとしたいところです。

最近の事例がこれ。

30cm上がったところに和式便器
スワレット+洗浄便座が付きました

以前の型番(CS500)のものはいわゆる普通サイズだったのですが、現行品はエロンゲートサイズという大きめタイプ。

ちなみに、そもそもなんで便器のサイズって2種類あるのか、という疑問を持って調べたことがあるのですが、どうやらこれ、普通サイズだといろいろ粗相を巻き起こしがちな、男性の座り排泄に対応するためとのこと。

なので、この古いけど新型になっているスワレットで改修したあとでは、男性には座りおしっこをお勧めしていただければ幸いなのであります。


なぜなら、やっぱり弱点はあるのです。これ。

便座を上げてみると

もともとの和式便器の上に、パッキンを挟んで固定するタイプの便器なので、当然下は和式便器のまま。溜まり水がないのですね。で、スワレット面はけっこう無理なデザインなので、水平にちかい面が多い。
なので立っておしっこをされると、けっこう跳ねる。そして、この裏側の掃除は正直なところ大変なので、ニオイの原因になります。

でも、先に取り上げた、特定福祉用具の腰掛け変換便座と違って、こちらはスワレット面にもちゃんと洗浄水が流れます。なので使い方に気をつければ、それらに比べればずっと清潔を保つのは楽なはず。なので座りおしっこ推奨なのです。
和式から洋式に変わる、そのタイミングで男性軍に置かれましては、是非そちらの使い方を選んでいただければ、と思うのであります。


そしてもう一つ、注意点があるのでした。

スワレットの断面図 

実は、一段上がった床から、スワレットの便器面は170mm高くなります。なので、便座面がさらに30mm上がると考えると、既存の高くなった和式便器部分の床面、プラス200mmがスワレットの座面高さになってしまうのです。

この床の高さ、まちまちではありますが、250mmから300mmというのが相場なので、300mm上がりの和式便器にこれを取り付ける場合、小柄な方だと、座っても足裏がつかないというケースがありえます。
となると、排泄の時の踏ん張りが効かないという困ったことになるので、専用の踏み台(60mm厚)を使ったり、床面の段差調整を工事で行ったりして、調整する必要が出てきます。

専用台をいれるとこんな感じ

ちょっと残念な感じになりますが、背に腹は変えられませんよね。出るものが出ない便器では役に立たないので。


さて、あえてデメリットから入りましたが、メリットもしっかりあります。

このスワレットのメリットは、しゃがみスタイルという膝壊しの排泄姿勢が不要になること、さらに洗浄便座が使えるようになることです。

特に、膝や股関節症で、手術を受ける方も増えておりますが、そういった皆様は関節の可動域制限がかならず申し渡されるはず。そんなときに和式トイレは一発アウトになってしまいます。

また、洗浄便座は、主に排泄介助が必要になったとき、慣れている方であれば、おしり洗いのかなりの部分をこちらの機械に任せることが出来ます。日々の介助の負担を減らすためにも、是非早めに入れていただければ。

あ、電源がトイレ内にない場合、近くの部屋から別途で引いてくる必要はありますね。この電気工事は介護保険の対象外、つまり全額自費となります。このケースは、隣が洗面所だったため、その洗面横のひげそり等に使う電源からアース線を含めて分岐をとり、壁内に線を通して壁の反対側、トイレ内に取り出してコンセントを設置しております。なので露出無しでスッキリ。


手元の予算はあまりないけど、和式トイレでの排泄は辛いと悩まれている方には、こういった選択肢もあること、でも注意点もあるよ、ということをお伝えしたく、最近の現場で久しぶりにこれを使ったこともあり、取り上げてみた次第でありました。



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