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だましだまし協力隊?! ~利用者さんのモチベを上げて、手すりを増やす口説き文句×5


手すりをつけることに対して、なんとなく嫌だな~と感じているご利用者さんも、たまにいる。杖を使うこともそうだけど、やっぱり自分の衰えを現実に突きつけられたような気持ちになるのだと思う。それは無理もない。

でも、こちらもそこはプロとして、様々な手練手管をつかって、まあ付けてもいいかしら、という方向に持っていくことは多い。本日はそんな、手すりを導入する際の、利用者さんへの口説き文句(pick-up lines)、持って行き方のお話です。


「手すりをつけるのは、脚が増えるのと同じ」


まず、手すりとはなんのためにあるか、という話をするときに役に立つのが、猫を飼っていることである。四つ足の動物の動きは、とっても安定感がある。それは当然で、シンプルに支持基底面が広いからである。

原理はこのシリーズで書いたのだが、利用者さんに現地調査でこれを説明している暇は現実的にはほぼ、ない。


なので、それをどう説明しようか、回りくどい言葉も通らないだろうなあと考えた。特に、段差のあるところでは、瞬間的に片足立ちになることから、そう行ったところに手すりをつける意義をどう説明したものか、と考えた結果、「手すりをつけるのは、脚が増えるのと同じことなんです」といって、実際にその動きをやってみたりもする。

特に、段差のあるところの跨ぎは、瞬間的に支持基底面が一本足底だけになるので大変不安定になる。そこに手すりをつける意義は、支持基底面拡張という点でとても大きいのだ。
手すりの取付に消極的な利用者さんでも、そういった危ないところに限定して、足が一本が増えるのだと言われれば、まあ良いかこのくらいは、と考えていただけるケースが多い。

ちなみに、それでも手すりはちょっと嫌だな・・と考えているな、という利用者さんには、まず背のあるしっかりした椅子を置いてみてください、等の誘導もする。ちょっと高くなった和室で休んでいる利用者さんが、トイレに行くときによっこらしょとその段差を跨いでいるような場合、その段差部にそんな椅子があるだけでも、そこに何も無いよりは100倍マシである。そこから貸与品の手すりなどに置き換えて、より安全性を高めることも出来るしね。

「杖は動く手すり、手すりは動かない杖」


たまに、手すりをいたるところに沢山つけたい、という方もいる。仕事としては有り難いのだが、正直そこまではいらないし、手すりが途切れるドアなどで危険箇所が目立ってしまうのでそれはどうかな?ということもある。なので、平面部分の移動時の支持基底面を福祉用具に頼る形で環境を整えることをお勧めしたい、そんなときのセリフがこれ。

支持基底面を広げるという点で、手すりの役割は杖と変わらないのよ、ということを、できるだけわかりやすく伝えているつもりである。そして、杖を持っているのではない、どこでも持ち運べる便利な手すりの一種を持っているのだ、という理解をしてもらえれば、室内だから他人の目もあまり気にならないし、すっとお試し利用にご了解をいただけたりするのである。

ちなみに、歩行器バージョンもあります。リハビリ経験者の方には、歩行器は持ち運べる平行棒です、と例えたりとかね。実際そんな支持基底面になっているはず。


「大変をちょっとではなく、簡単をたくさん」


生活リハビリの観点から、室内での動きは多いほうが良い。でも、ちょっとした段差などを越えることを、トレーニングのように捉えている頑張り屋の利用者さんも結構多い。なので、住環境整備でそのあたりを緩和する理由として、こういった台詞を使う。
頑張るのは、リハビリのお姉さんの前でたくさんやってらっしゃるし、家では楽をしてもいいんです、でも楽なことをたくさんやれるようにすればリハビリの効果は出るし、転ぶ危険も少ないから逆戻りもしにくいのです、そんな話をするわけです。

動かないと寝たきりになる、と半ば脅されたかのように、在宅に戻ると頑張ってしまう利用者さんなどには、こうやってブレーキを掛けずに動きのイメージを変えてもらうことで、転倒リスクを下げていきたい。

「要らなくなったらすぐ返せるので!」


一緒に組んでくれる福祉用具屋さんの皆様方には大変申し訳ない。でも、貸与品手すりのメリットは位置を動かせること、そして返せることだからね。
ちょっと将来的にいらなくなるかもな、でも退院直後などは手厚く対応しておきたい、という段差部などには、こういうセリフとともに貸与品を導入すべく説得することが多い。特に、踏み台付きの上がり框手すりにはこれを多用している。だってアレ便利なんだもの。保険者によっては踏み台部分は給付の対象と認めないとか言われるのだけど。

また、住宅改修で設置した手すりでも、縦の柱などに固定したものは後々設置高さの修正ができます。そんなときは、「必要なら後で高さを変えられるので!」と説得することもあるのです。


「年金から引かれている分がちょっと戻ってくるだけです!」


こんなに我々の世代が福祉のお世話になってしまって良いのかしら・・と奥ゆかしいことを仰る利用者さんもいる。その次の世代として、お気持ち大変ありがたく。でもお気持ちだけで十分なのである。転倒リスクを放置して、再入院すればそんなレンタル手すりの費用より遥かに高価な医療費が掛かるし。利用者さんの方々が元気で過ごされることが、次世代への最大のメリットなのだ。
というわけで、そんなときはちょっと冗談めかしてこんなセリフを。結構引かれているという実感は皆さんお持ちのようなので、そう話すと貸与品手すりの1台くらいは借りてもいいかな、という方向に気持ちを傾けていただけたりするのである。



パッと思いつくだけでも、こんな話をしているのであった。
ともかく、利用者さんが持っている手すりや介護保険を使うことに対してのネガティブイメージを、ちょっと角度を変えて上書きして、まず1本からでも使ってもらい、その手すりが実際にどんな効果があるかを実感してもらいたいな、と思っていろいろな伝え方を考えている。

そして利用者のみなさんが転ばず、慣れた家で元気に暮らせることが、次の世代にとっても有り難い、Win-Winの関係なのであるということは、常にしっかりお伝えしたいなと考えているのであります。

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