柔らかくて硬い床、「ころやわ」 〜新しいモノ、試します ①
この高齢・障害者向け住環境整備の世界、いろいろな新製品が出ては消えていったりしているわけですが、さりとて中には見逃すには惜しい、これはウチの知識の引き出しに入れる可能性あるぞ?みたいなモノも出てきます。
そんな、
キラッと光るものをお取り寄せしてレビューしてみよう!
のコーナーです。
記念すべき第一回はこちら。先日介護用の通信機器マガジンをご紹介させていただいた、やおらじボラちゃんさんピックアップの、転倒時の衝撃を緩和しつつ、通常利用時の沈み込み抑制を両立した、とされるこの製品。
「ころやわ」(株) Magic Shields
である。
介護用品ネーミングソムリエとしても、合格点を十分に差し上げられる商品名である。床の要素があるとなお良かったかも。
実は我が社にも、以前にこの製品がベストマッチな相談が来たことがある。
床が硬めの塩ビフロアタイルをコンクリートに直張りした仕様である、有料老人ホームに入所しているお母さんが、室内でよく転ぶようになって危険極まりない、なので車いすと貸与品手すりの導入に合わせて、床にクッションを敷きたいとの要望だった。
何年か前の話になるので、そのときはコルク表の60cm角、6mm厚くらいのクッションタイルを敷き詰めて、それを弱粘着の両面テープで張り詰めて対応した。これならぐっと押せば底付きするので、突っ張り棒の貸与品手すりも設置できた。
ただ、車いすの利用はやはり大変になる。車輪の沈み込みによる転がり抵抗が大きくなったため、自走で動かすことは難しくなってしまった。
だが、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は、利用者さんが退去されるときの原状回復義務がある。つまり立つ鳥跡を濁さずの心で引き渡さねばならぬ。なので、自己所有のご自宅の工事を行うケースと比べて、釘穴等も開けず、綺麗に取り外せる方法でしか対応が難しいという特異性がある。
このときは、あまりの床の硬さを緩和することが最優先だったことから、結果的に車いすの利用しやすさには目を瞑った選択となってしまった。
正直これがベストとして推せる選択というよりも、ココまでが限界、といった感があったことは否めない。
また、先ごろは介護畳についてもここで取り上げた。もともと畳が硬質な床ではないから、緩衝性のある畳ってそこまで必須かな?という気持ちはありつつ、そういった試みがあることはよく分かった。
そこで、リフォーム畳という製品を紹介したのだが、これの売り文句が
だったのである。これはいったい、どのようなものだろう?
でも畳敷きのところでの転倒はそこまで怖くないんだよな、御影石とか、コンクリート下地の床がヤバいんだけどなあ、などと考えていたときに、上記の記事を拝見したのである。
これは、お取り寄せするしかない。
お取り寄せました!
さっそくいってみよう。
1、どんな仕組み?
厚さ12mm程度のこの製品、さっそく恥ずかしいところ裏面を覗いてみる。
X型の樹脂整形品がなにやら並んでいる。それぞれ足がついていて、押すと硬めのグミみたいな感触で沈む。たぶんこの脚の形状がこの製品の肝なのだろう。押し込み幅が増えるにつれて抵抗感と反発力が増えるデザイン。
ウェブサイトを拝見すると、特許を取っていらっしゃる。
「可変剛性構造体」
というネーミングで。いかつい感じの名前ですがそのとおりのものです。
ちなみにこちらを作られている、(株) Magic Shields(マジックシールズ)の社長さん、ヤマハの元デザイナーさんだそうで、トライアンドエラーを繰り返して練り上げる、製品開発の肝をよくご存知だったのでしょうね。
製品は22mm厚のものと、12mmのものがあり、後者が最新型っぽい。
2、ほんとに沈みにくいの?
これは実際やってみるしかない。
まず、体重0.08tと表記できる私から乗る。
基本的にはほぼ沈まず、でも足裏に少し凹む感触はある。でも片足になっても沈まず、かかと立ちで沈む。
片足裏の面積が25×8=200cm2、踵面積がだいたい6×6=36、数字を丸めて40cm2として、80÷40=2kg/cm2なら沈み、80÷200=0.4kg/cm2なら沈まない。
車いすなら、すこしタイヤが凹んだ状態を想定し、接地面が主輪30cm2×2本で60cm2、キャスターがその半分で30cm2、計90cmと仮定する。自分が乗った時の総重量を100kgと仮定して100÷90=1.1kg/cm2、車いすではガッツリ沈まない床という触れ込みなので、そのくらいの耐荷重性がありそうである。
次にうちの中学生(約35kg)にも、おざなりに渋々の塩対応ながらちらっと乗ってもらう。信頼関係の構築が足りないのはいまさらである。
これがほぼ同様の結果。踵だと沈む。足が小さい分を考慮して、踵が30cm2とすると35÷30=1.2kg/cm2になるので、1~1.5kg/cm2あたりに静的荷重における沈み込みの境界線があると思われる。
3、端っこでつまづかない?
この製品が頑張っているところ、その2。ちゃんとそのための部品をつくっていて、それが特筆に値するものであった。
スロープ材、これが用意されている。勾配は1/24程度、ほぼ平地と変わらない。
クッション性も急に切り替わらないようにしている。歩行感変わると危ないもんね。
裏の樹脂材の整形部で工夫して、壊れにくく薄い先端部である。これは文句なしの出来。あとは経年劣化したらどうなるかくらい。
摺り足で移動しても、問題なくすっと上がっていく。車いす等でもほぼ抵抗なしで行けると思われる。
4、福祉用具と併用できるの?
大丈夫っぽい。
5、でもお高いんでしょう?
施設での利用の場合の候補は、ベッドサイドならまずはこれだろうか。
「ころやわマット」(薄型マットタイプ)
とのこと。厚さ2.2cmの旧製品シリーズはもっと安いんだけど、段差で転びやすくなるリスクを考えたら、この高性能なスロープが使える、この厚さ1.2cmのものを利用する方が良さそう。もっと広い場合は応相談とのこと。
そして、在宅用としてこの3月から自費レンタル事業を開始したそうで、
(介護保険は使えません、という意味での自費です)
料金はだいたい1m2あたり1,000円/月程度、施工費および出張費は別途。
表面材はクッションフロアもしくはタイルカーペットが各色選べます。
ただメーカーさんの責任施工なので、返却解体時の出張費も掛かるかも。
詳しくは先方にお問い合わせください、ですね。
まとめ
ちなみにこの製品、すでに560以上の施設への導入実績があるとのことで、今後もブラッシュアップが進むのではと思われます。
22mmの厚さだった初期タイプから、12mm厚への進化はかなり劇的で、住環境整備の現場をいろいろ見てきた立場からも、その境界部分がちょっと怖いな、というところを綺麗にクリアされてきたなという感想です。
製品としては太鼓判、あとは費用対効果の判断かと。皆様のご参考まで。