見出し画像

車いすになっても慌てない ~介護保険で借りる外部用スロープ


先日、リフトの話を2週にわたりご紹介したのですが。


段差解消機や可搬階段昇降機の話をしたからには、これも書かねばなあ、と思っていたところに、前回の記事にしたところ(旧朝香宮邸)のエントランスでこんなものを見かけたのでした。

ラリックのガラスの前に鎮座するアーチ型のスロープ

他の方が書かれた過去のこちらの紹介記事を見ると、以前は手前の段差部分に直線型のスロープを掛けて、奥の小さい段差が残る形になっていたのですが、これは段差まるごと、太鼓橋のように跨いでおります。良いぞ。

ということで、どこのいかなる品物か、知らなかったらすぐ調べるの巻です。

段ない・ス ロールタイプ 【 (株)シコク 】


こちらの製品、平成25年からあったとは。10年間知らないとは我ながら不覚。この分野もいろいろ新しい製品が出ているので、国際福祉機器展でチェックするようにしていたつもりでしたが、しっかり見逃しておりました。

特徴的なのは、長さが10cm単位で調整できること。

1枚分、横から抜き取れるのですね

そして、丸めて保管できること。

あまり長いタイプは難しいですが


そして、活用方法で感心したのは、これ。

以上、公式サイトさんから引用

秘技、錦帯橋作戦ですね。太鼓橋の連続。中間部の橋脚にあたるところにはひと工夫が必要ですが(コンクリートブロックを埋めるとか)、長さを10cm単位で調整できることがここで生きてます。急な退院に備えて急いで平坦化が必要な場合など、使えそうな手段です。なるほど、よく出来ておりますね。

せっかくなので、同じ会社の製品をもう一つご紹介。

Lスロープ FK 微笑の杜若  【 (株)シコク 】

ほほえみのかきつばた」?! と読むそうです。あえて難読に振る、それもまたネーミングの妙ですね。覚えてもらってなんぼですし。
こちら、曲がり部分があるスロープです。30°、60°、90°に曲がり方向も選択できます。
また姉妹器具として、微笑の朝顔さんもいらっしゃいます。そちらはRの部分が90°設定で固定、設置角度が選べないタイプ。

これは事例がありました。設置するとこんな感じになります。

三種類のスロープを配置してデモンストレーションしましたよ

ただ、撤収を毎回やるのはちょっと大変になるので、基本的にこういった変形型のスロープは置きっぱなしになります。なのでその場所での、ご家族の方などの歩行移動にも対応できないと困ります。その点、ここは上手くいかず、第二案としてお勧めした車庫の方にあったウッドデッキの端部を延長し、段差解消機を設置することで纏まりました。



 

なおこういった可搬型のスロープ、介護保険では福祉用具貸与として毎月いくらで借りることが出来ます。特に、スロープについては車いすなどと違い、要介護度による制限がありません。つまり要支援1でも借りられます。
なので、認定は要介護2に満たないけれども自費で購入された車いすをお使いの方や4輪歩行器をお使いの方も、(例外給付の手続きを取らなくても)対応可能なのです。

また、その長さも60cm程度の駅などでよく見る小型のものから、最大で2.8m程度のものまであります。介助者の能力が必要とはいえ、70cmくらいの段差まで対応できる場合も。ただし敷地の広さが必要だったりします。

下記の記事で、適用条件を貼っておいたのですが再掲。

ダンスロープライトスリム【(株)ダンロップホームプロダクツ 】の場合


でも、これでは高さが届かないか、残念!というケースもありますよね。

まだ諦める時間じゃありません。あるんです。奥の手が。

ケアスロープJ【ケアメディックス(株)】

左の台で、スロープ2本を接続してしまうという技が!

この踊り場ジョイントなら、スロープ2本を接続して使えます。事例を見てみましょう。

門扉の先に5段の階段、高低差は60cmくらい


手前側、車庫に少し食い込んでいますが敷地内です

門扉が閉まらなくなる問題はあるものの、歩行者通路も階段部分で確保できているので、ご家族の動線問題も解決しております。旗竿敷地だとちょうどいいかもという事例ですね。

またこの現場、もう一か所の段差が問題になりました。玄関前のポーチです。一段なので、ティッピングで車いすの前輪をあげて介助者が段差をクリアすることは可能だったのですが、玄関戸の下にも同じくらいの段差が。上の段があまり広くないため、そっち側では安全なティッピングが困難、となるとそのポーチを広げることが必要になります。

この段差部をどうにか

ということで、手前側の段差をなくしてしまえばいいということになり、そこは住宅改修により段差解消することとしたのですが。その工事の際にも実はこの貸与スロープが意外な活躍をしております。

工事中踏まれたくないところに、橋がかかりました

いわゆる養生をどうするか、と考えていたら目の前に解決が転がっておりました。なお、そちらの完成形はこんな感じです。これで玄関の内側までは車いすで介助移動が可能になっております。
福祉用具貸与と、住宅改修の複合による住環境整備、こんな具合です。

似たタイルの柄を探して、緩やかに平坦にしましたよ


段差解消機(リフト)のほうが、介助力は必要としない分だけ介護者の負担は減りますが、外出についてはデイサービスの送迎の方に玄関までの介助を任せられることも多いかと。
敷地の状況や、そのサービス利用の状況を踏まえて、こういった外出支援のための福祉用具の使い方もできますよ、といったご紹介でした。


先の美術館見学が、意外な方向に転がりました。いろいろ行ってみる、やってみるって、だいじ。


※参考
同じ福祉用具貸与でも、スロープでなくリフトを使う方法もありますよ。


いいなと思ったら応援しよう!

てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)
この記事、すごく役に立った!などのとき、頂けたら感謝です。note運営さんへのお礼、そして図書費に充てさせていただきます。