階段ですべらないだけではない話 ~後付けノンスリップのチョイス
介護福祉士養成校などでの、授業の準備をそろそろ始めないとならない季節になってきた。基本的に毎年大きく変わることはないのだが、教科書も改定されるし、何より法令がかわる。なので、1年遅れの知識を教えないように、資料をチェックする時間を取らねばならぬ。
で、そこを眺めていると、住宅内での事故の現状という項目があり、家庭内のどこで高齢者はやらかしているのか、という図表があるのだ。
元は国民生活センターの調査なのだが、そちらを当たっても10年以上前の報道発表資料が出てこないので、それを引用しているサイトのリンクを貼ってみる。
「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故 -高齢者編-」が元ネタです。
医療機関から2年間、約1万件の家庭内事故の報告を収集し、65歳を境にしてまとめた研究のようである。
これを見ると、居室(基本的に平坦なところですね)の次に、階段での事故が高齢になると増えることがわかる。
というわけで、本日は階段の転落防止の話の、手すり以外のところを取り上げる。滑り止め、ノンスリップである。
住宅の階段は、実は段の構造も転落しやすいものになっていることが多い。問題点のひとつは、段の先端の仕上げが他と変わらず、滑り止め機能がないこと。もうひとつは、段の先端の見た目が他と変わらず、先端の位置が見にくいことである。
手すりがない場合は、物理的に支持基底面を増やすほうが転倒防止に直結するので、まずそちらからお勧めする。でも手すりがついた後でも、上記の問題点をそのままにしておくと、手すりに捉まって転ばずには済むかもだが、やはり足はすべらせる。
なので、その段の先端に、何かしらをつけようか、ということになる。
だいたい、ホームセンターなどでは、ゴム製の、厚みが6mm位になるものが売っていて、気軽に誰でもつけることが出来るようになっているのだが、仕事としてそれを使うのは実は気が引ける。
先端が段差として引っかかるようになることと、耐久性もそこまでないことが、それを仕事として使うことに躊躇させるのだ。
なので、こちらがお勧めするのは、だいたいこの製品になっている。
ハイステップ アート【ナカ工業(株)】
ちなみにナカ工業さん、日本の手すりや滑り止めのトップメーカーです。
なんとこのハイステップという製品、初代は1954年に遡るそうな。ほかにも気の利いた製品をたくさんつくられている、凄い面白い製品の歴史。
個人的には、1980年の住宅用階段手すり「ママの手」が気になります。
話を戻しましょう。
こちらの製品、先端の段差が3mm以内と、躓きの危険が少ない厚みになっているので、これならつま先を引っ掛けずに済みそうである。また、カーペット用はカーペットの厚さを考慮して、厚めです。
薄型が、技術的によく頑張っているのがよく分かる画像だと思います。
これ、取り付けるときは金台をつけて、そこにこのゴム(タイヤと呼ばれる)を張り込みます。
これなら、どんなに手荒く使われても剥がれました、ということはまず起きないし、事故の原因にもならなそうで安心なのだ。そして体重をかけて踏むと、ちゃんと滑り止めとして働きます。
また、これカラーバリエーションが豊富なのである。
なので、既存の階段とコントラスト(明暗)や色彩に変化をつけておけば、先端が見えにくいという問題も改善することが出来る。仮に同色にしても、金属の部分が主張しますし。
こんな具合です。なお、金台の両端は2cmくらい余裕を持たせて材料をオーダーするのがポイントです。拭き掃除のときも、そこからホコリを落とせますし。
カーペットの階段はこんなふうになります。先端がだいたいほつれて丸まり、滑りやすくなっていることが多いですね。
こんなふうに、足りないところの手すりと合わせて設置します。
また、室外についてはよくあるやつですが、スリーエムのこれを使ったりしていますね。これも老舗中の老舗。使われるのには理由がちゃんとあります。施工性と、耐久性がやっぱり高いのです。
カラーバリエーションが、黒、黄色、緑しかないのが難と言えば難。
貼り付ける際、プラスチックハンマーで頑張って叩いていくと、タイルの先端の形状に合わせて変形密着します。後は濃いグレーとか、マシな色があればもっといいのですが。
というわけで、階段の滑り止めについてざっくり見てまいりました。DIYでできる、お手軽な貼付け式でもないよりはずっとマシではありますが、もし介護保険の住宅改修を行う際は、手すりの設置だけでなくこういった事もできることを、頭の片隅に残しておいていただければと思うのでした。