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自立のための持ち上げメカ ~介護保険で使えるリフト、いろいろ(後編)
介護保険におけるリフトいろいろ、後編です。
前編はこちら。
実はこのリフト一族、利用者さんご本人が自発的に動くことにフォーカスして作られたものも、結構あります。利用者さんが、立ち座りや家事などの際に動きやすくする方向性のリフト、並べてみましょう。
床座の暮らしを支える
たとえば、掘りごたつでの暮らし。
こたつむりライフを人生で一度でも送ったことがある方なら、全ての必需品が立って動かずとも手が届く環境を整えて、とことんダラダラして暮らす快適さを知っているはず。
でも、大腿骨の骨頭や、膝関節を壊して関節可動域に制限ができた方が、床からの立ち上がりでそれらの関節を大きく曲げることは禁忌。また壊れます。なのでこたつは残念ながらダメ、などど言われがち。
さりとて、テーブル+椅子式のこたつに交換すると、椅子が増えることで微妙に部屋の広さが足りなくなったり、動作や視線の高さが変わることで、周辺の家具まで使いにくくなりがち。なので、出来ることならそのまま床座のこたつで暮らしたい、という方もいらっしゃる。
そういう方向けのリフト、あります。
独立宣言スマートプラス【コムラ製作所】
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こちら、電動昇降機能に加えて、こたつ廻りなどの狭い空間で便利な回転機能付きの昇降座椅子。貸与価格はおおよそ¥1,500/月(自己負担割合1割の場合)。これがあれば、日中の暮らしをこたつ中心に組み立ててもまだやれる、という方はきっといるはずです。
でも、ちょっとこの形はねえ、もっと落ち着いた座椅子がほしいのだけど、とか、電気のコードに足を引っ掛けるのがちょっとねえ、という方に対応したものも、ちゃんとあります。
座いす型リフトアップチェア リクライニング1100【フランスベッド】
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こちらの貸与価格はおおよそ¥1,210/月(自己負担割合1割の場合)。またバッテリー式のため、椅子のための電気配線につまづく問題は解決します。
それぞれの機種に特徴があるので悩みますが、介護保険のレンタルのよいところは、自分に合わない場合は最小限のレンタル料で返せるところ。
なので、要介護2以上の利用者さんなら、ケアプランの給付枠が余っている場合、椅子+テーブルでの暮らしに慣れない方はまず借りてみるのもありではないかと。またドクターやケアマネさんに相談すれば、特例給付といって要介護2に満たない方でも借りられるルートも一応ありますしね。
要支援・要介護1の者(軽度者)に対する以下の種目については、介護保険給付は原則対象外。ただし、厚生労働大臣が定 める告示に該当する対象者については、要介護認定における基本調査結果等に基づく判断があった場合や、または、市町村 が医師の所見・ケアマネジメントの判断等を書面等で確認の上、要否を判断した場合には、例外的に給付が可能。
椅子からの立ち座りを助ける
床座の暮らしは日本の住まいの特徴、といいますが、最近はそんな家も徐々に減ってきております。なので、椅子座での暮らしを営んでいる方も多いのです、が。
低めの座面が特徴の椅子からの立ち座りが難しくなることも、やっぱり自立した暮らしの妨げになったりします。
よくあるのはソファからの立ち座りが辛くなること。だいたい、ソファの場合はもともと座面が低く沈み込むために、立ち上がりの動作時に足裏を手前に引きにくく、重心移動のための前傾も大きく取らないと難しくなるのです。
実際の現場では、こういったケースではまず貸与品の置き型手すりをソファ側方や前方に入れて様子見することが多い。
でも、それでは立ちにくい方もいらっしゃいますし、どうせならオットマン(足置き)が使えると良いのだけど、それがまた移動時は邪魔なんだよなあ、などと考えた方もいるかも知れません。
そういう方向けのリフト、あります。
マルチファンクション リフトアップチェア【フランスベッド】
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フランスベッドさん、こういった椅子の開発に熱心ですね。自分もこれ、ちょっと欲しい。なお希望小売価格¥320,000。ちょっと(ではないな)無理かあ。
でも、介護保険が使える方なら、貸与価格はおおよそ¥1,430/月(自己負担割合1割の場合)なので、導入の敷居が下がります。
また、古い自宅トイレの便座で立ち座り困難となる方も多いです。
洋式便器、おおよそ昭和40年代までは座面高さが38cmくらいでつくられているので、現在のものに比べて腰の位置が低くなることも理由ですね。
なお、そういった方の第一選択肢としては、便座の上に置いたり、便器と便座の中に挟み込む補高便座というものが使えます。これで座面高さは3〜5cmアップ、ほとんどの方はこれと手すりの設置で動作が改善して、なんとか自力でやれるようにはなります。なおこれらの便座廻りの福祉用具は、特定福祉用具という扱いになり(再利用にそぐわないもの)同一年度の合計額で10万円までが購入費支給の対象になります。
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でも、足裏にトラブルを抱えていたり、さまざまな理由でそれでも足りない方はいらっしゃる。そんな時の、便座からの立ち座りの切り札がこちらです。
トイレリフト【TOTO】 ※腰掛便座(特定福祉用具)
トップ画像のものがそれです。
リフトアップは、斜めに押し出すように上がるモードと、垂直に上がるモードを、取付時のリンク部分の設定で変えられるのですが、その両モードそれぞれ上がった状態で展示してありました。操作はリモコンの上げ下げボタンを押しているときだけ動作する安全設計、アームレスト付きなので、両手をそこに置けば座面をしっかりおしりで捉える事ができるし、よく考えられております。
なおこちら、希望小売価格で¥243,100(税込)。これも特定福祉用具のため、そのうち10万円が介護保険の給付対象となるので、実質9万円が給付される形(自己負担割合1割の場合)ですね。おおよそ15万円が実際の自己負担額になります。
移動からの動作を支援する
まず思いつくのは、電動車いすのこういった多機能タイプ。
F5VSコルプス【ペルモビール】 ※電動車いす
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こちら、ぜひ変形動画をご覧ください。アニメじゃありませんよ。
もはや車いすというより、姿勢変換機かもしれません。座位保持、チルト(座面の傾き)とリクライニング、立位などが自由に設定できて、そのまま移動できます。身体能力が限定されてしまった方が、残存能力を活かして社会参加する際に、このような車いすは必須と言えるかも。
こちらは2022年から一部の地域にて介護保険で使えるようになったそうですが、貸与価格はおおよそ¥12,600/月(自己負担割合1割の場合)とやっぱりお高め。スウェーデン製の最上級機なのでこれは致し方ない。ちなみにこちらは移動用リフトではなく、電動車いすというカテゴリーになります。
また、片麻痺の方などで、車いすが必須になった方でも、片足が動く方はリハビリを兼ねて健側での足蹴り移動を推奨されることが多いはずです。片手でハンドリムを回すのは直進性がいまひとつですし。
でも、足蹴りには座面を少し低くしないと難しくなるので低床の車いすを勧められたりします。また腰痛がひどく、椅子に座っている時間が長い方でも、足蹴り移動は出来たりします。
でも、低床なのでちょっと高いところのものが取れなくなったり、炊事洗濯が難しくなったり、生活上の課題が出ます。
そういった方のためのリフトがこちら。介護保険上、リフトなんですこれ。
多機能ワークングチェア タンゴ700電動【アビリティーズ・ケアネット】
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デンマークのVELA社製、ユニ21ELという機種の後継機であるこちら、自費で買う場合の希望小売価格は¥490,000ですが、介護保険での貸与価格はおおよそ¥2,000/月(自己負担割合1割の場合)。
そしてこの小さなボディに詰め込まれている多機能はぜひ動画で。腰痛持ちにもピッタリ合わせられますし、そこに電動リフトによる座面昇降機能までついてます。
・座面の昇降機能(電動)
・座面の回転と90°ロック機能
・背もたれ、座面の角度調節
・跳ね上げ式の肘掛け
・背もたれ、肘掛けの高さ調節
・四輪一括ブレーキ(キャスター旋回も止まる)、レバーは左右交換設定可
・足元を開いた、足蹴りに適合したキャスター配置
どちらかと言うと、座面昇降はこの椅子の機能のほんの一部なのですが、電動タイプは介護保険上のリフトの定義を満たしているため、介護保険が使えます。
でも、ガスダンパーによる手動昇降タイプは介護保険の給付対象外。車いすとしては定義に一致しないので、保険が使えないのですね。
そのあたりのジレンマについて以前書いた記事、ついでに置いておきます。
前後編にわたって介護保険で使えるリフトの仲間を見てきました。
あまり一般的に知られていない気がするこれらのリフト、頭の片隅に留めておいていただければいつか皆様のお役に立つことがあるのでは。
そんな未来の保険として、この記事をご活用いただければ幸いです。
※福祉用具の価格等は福祉用具情報システム(TAIS)を参考にしています。
https://www.techno-aids.or.jp/ServiceWelfareGoodsList.php
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![てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/135552958/profile_291e7913fb9a798c0ae426a5368601fe.jpg?width=600&crop=1:1,smart)