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地面があなたを転ばせる 〜浮いた足元の破壊力と、対策について
足を掬われる、という言葉はたとえ話でよく使われるが、実際に足を掬われて転んだ経験のある人は、どのくらいいるのだろうか。
自分は、ある。
暗くなってから、どうしても仕事車の片付けをしなくてはいけない時があるが、自分の倉庫は仕事部屋の横に増築したところで、入口は外部にしかないのに、その内部と周辺の灯りは、その増築部に沿った事務所の窓から漏れる光に頼っている。
だが元来面倒くさがりな自分である。その時は、事務所の照明を消したままで荷物を運んできてしまった。携帯のLEDで照らしていたとは思うのだが、両手に持った荷物優先なので、明後日の方を照らしていたのだろう。その結果。
通路横の花壇の縁にあった、レンガを変な角度で踏んでしまった。そして次の瞬間、真島昌利風に言えば、敷居の角にキスをする羽目になっていた。正確にはおでこで倉庫入口のそこを直撃した。走馬灯がよぎるどころではなかった。本当に一瞬で、気がついたら転んでいた。
幸いだったのは、その倉庫が全て木で作られていたことである。敷居がコンクリートだったら、いま呑気にこんな文章を書けていなかったと思う。
だが、体は正直である。
こういうふうになりました。ちょいと衝撃画像です。
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こちら、流石にこれはまずいと思って、たまたま会計をやりに来ていた友人に連れて行ってもらった、救急病院でのおでこの状況である。頭をぶつけると、本当に漫画みたいなコブってできるんですよ。
まずは脳に異常がないかのチェックが最優先である。幸い、CTの結果は大丈夫(後日なんか出るかも知れないとは言われたが)だったのだが、ついでに右手の薬指から変なふうに着地したらしい事にも気づき、(というか頭が気になってそれどころではなかった)ついでに撮像してもらった結果、「やっぱり折れてますね~」とのことであった。幸い、利き手側とはいえ薬指なので生活上の支障はほとんどなかったのだが、こちらの養生が悪かったために(固定するやつを作ってくれたのだけど、お風呂などの時に抜き差ししたのが悪かった)、しっかり右手の薬指はいまも微妙に斜め上を向いたままである。なので、右手の指を見るたびに、このことを思い出す自分なのであった。戒め効果、絶大である。
ちなみにこのコブ、徐々にしぼんでいくのだが、それと同時に右目の周りがパンダ状に赤黒くなる。いわゆる青タン状態である。コブの中の血液が、徐々に重力により落ちていって眼窩の中に入るのですね。漫画でよく、ボコボコにされたキャラがパンダ眼になる絵柄があるじゃないですか、まさにアレです。受傷後3日後から、2週間くらいはそんな具合でした。
ギャグ漫画の表現が、実はリアルであったという学びを得た一件でした。
というわけで、ようやく本題、お仕事の話です。
「気をつけて転ばないようにします」と言われる利用者さん、とても多いのですが、転ばないようにして転ばないなら手すり屋は要らない。
介護予防という名目で、転倒防止のための運動しましょう、というリハをやるのもいいのだが、それで防げるなら手すり屋は要らない。
いくら気をつけていても、運動していても、外的な要因で転んでしまうことは多々ある、というより、転倒のきっかけとなる、その最初の瞬間は外的な要因がほとんどなのではないか。躓く、滑る、その他諸々。
身体能力が高ければ、瞬間的に支持基底面を広く確保し(足を大きく踏み出して)、重心位置を動かして安定を図ることもできることもあるかもしれない。でも、足を掬われるのは移動時である。急ぎ足だったりすると、一本足だけが支持基底面という瞬間もでてくる。そのときにその脚元が掬われて、さらに両手が塞がっていて、周囲に支持物もなければ、もう転ぶ以外に選択肢がないのです。
なので、転倒防止には、動線の足元チェックがとても大切。
室内では、とくに玄関の上がり框周囲にありがちな敷物が滑るかどうか。
不要だね、といって仕舞っていただける方もいれば、それを使い続けたいという方もいるので、継続使用の場合はご家族に、100円ショップで滑り止めのマットを買ってきてもらって入れたりしてもらう。何ならこちらで実費でやったりもする。玄関という、段差や硬い床がある部位では、その滑りが致命傷になったりしかねないので、そこは業務対象外とはならないのだった。
また、玄関周りでは踏み台も要注意である。それがあることで、段差が大きい場合は便利に使えるのだけど、その踏み台が軽量、かつ脚が天板よりも引っ込んでいるような場合、固定されていない台だと、端っこを踏んだ瞬間にキレイにひっくり返る。なので、介護保険の住宅改修を利用して踏み台を設置する場合、何らかの方法で固定することが必須となっている。
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ただ、お掃除のために台を動かしたいというニーズや、安くやりたい(とくに住宅改修用のやつは、高さ調整のしくみがあるため高いのだ)という話になることもある。そういうときはコストも考慮して、コンクリートブロックをおすすめすることも、時々ある。でもそのときは重量ブロックのコーナー部材を使って、ひっくり返りや躓きの要素を減らしている。こんなふうに。
また、外部の通路では、要注意なのは敷石の浮きである。
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こちらの場合、手すりを設置すると同時に、その足元をチェックしたところ、鉄平石があちこちで浮いていた。踏むとガタつくだけならまだいいのだが、下地が壊れたりしているとひっくり返る。
ここの場合は、いちど浮いた石をチェックして、掃除したうえで接着している。なお、その接着にはコンクリートボンドと呼ばれる接着剤を使うのだが、少量かつ粘度が高い小さいやつだと、施工性も悪いし、お高い。
なので、自分が使うのはこちらである。けっこう緩めのペースト状で施工性はいいし、量も多くてお安い。そして、なによりしっかり固定される。
そのかわり、チューブの口に残ったボンドをちゃんと拭き取らないと、次に使う時に手では開かないくらいフタが固まる。なので、工具を持ち出して大変なことになるのでした。
なお、このメーカーからはこんな製品も出てました。塗布型の滑り止め、使ったことはないけど便利かもしれないので、自分のメモ代わりにここにリンク貼り。
もし、ご自宅の外部通路でそんな箇所があるようでしたら、そんなに難しい作業でもないので、ボンドを買ってぜひ固定をお願いしたく。低コストでも、その効果は抜群だと思います。
おまけ
積極的にはオススメしないのですが、ブロックや、コンクリートレンガとこの接着剤の併用で、下地がコンクリートならこんなことも可能です。
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材料費、かかっても4000円程度の小階段です。
階段を作るときの注意点としては、ブロックの大きさは200×400×100〜150程度であること。ここはたまたま、調整用に似たようなテクスチャーのコンクリレンガがあったため、その分を調整に使って踏み面を広げていますが、ブロックだけでやろうと思うと踏面が狭くなるために工夫が必要になりますね。できれば切断しないでやりたいところです。
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