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個人主義と集団主義

1/20からスタートしたID (イリノイ工科大学デザインスクール)の春学期は、5/8に全日程が終了し、早くも夏休みに突入しています。
めちゃくちゃ疲れたので、体力の回復を優先させて、なるべく何もしないようにしています。しかし、頭がワーカーホーリックな状態になっているので、疲れているにも拘らず、つい何かを探して作業してしまう。。一回ギアを落としたいので、とりあえずU-nextで映画やアニメなどをひたすら見ている生活です。(しかし、逆に返り打ちに遭い、キングダムが面白くて止まらなくなる。なんなの疲れる。。)

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さて、この夏は Covid-19の影響で、多くの学生がインターンシップをキャンセルされており、学校としてはその受け皿として、サマークラス・チャレンジコンテスト・企業提携プロジェクトなどを数多く用意し、学生の経験づくりを手助けするサービスを提供しています。(私も少し応募してみました。)

一方で、春学期後半から一斉実施されたオンラインのクラスでは、どうしても運営面で試行錯誤が多く、質が低下したことは否めません。私の場合も、オンラインだと大切な質問があったにもかかわらず、会話への切り込みが難しく、何度も機会を逃してしまったことが、質の低下として実感したことです。。
そして、一部の学生たちからは授業料ディスカウントの嘆願が行われています。しかし、自然災害が相手のため誰も悪く無く、学校側も努力はしています。ディスカウントは別に要らないから次学期からしっかり改善して下さいという日本人的な感覚と、ネイティブの感覚は違うようで、権利の主張をして自分を守るという意識がとても強いことを改めて実感させられます。
実は、以前も同様のことがあって、昨年オバマ氏が公用でシカゴに来た時に、学校のスペースを一方的に封鎖して会議を行ったことがありました。ローカルの学生を筆頭に、自分たちのスペースと権利が侵害されたと猛抗議し、学校側と徹底的に協議を行うという出来事がありました。
"強者から自分の身は自分で守る"、これが "キャピタリズム & デモクラシー" の考え方なのだと、私個人的には理解しています。(しかし私は東洋人なので、共感はし難いですが。。)

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さて、本日はこれに関連して、個人主義集団主義について少し備忘したいと思います。
留学において、最重要な経験の一つは、様々な国籍の学生たちと協業できることだと理解しています。私がこの一年間に経験したグループワークでは、US・インド・中国・ブラジル・ポーランド・ウクライナ・韓国・トルコ出身の学生たちと一緒にチームを組む機会がありました。その中で感じたことは、当然ですが彼らの出身国に共通するキャラクターやワークスタイルの違いです。特に、個人主義と集団主義は、一緒に働く中ではっきりと見出すことができる違いです。

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日本人としての私が、この両者スタイルと過ごして来た感覚は、以下のようなものです。

- 個人主義スタイル: *USローカルは大半がこのタイプ 
どちらかというと個人としてのエゴを優先するため、一匹狼的な動き方を好みます。(一緒に働いていると、ビジネスライクで絆が弱いため一抹の淋しさを感じる。)
スピードが早く、テキパキと個人裁量に分割し進めるため、短期的な生産性が高く、機敏さ(Agile)の強みがあります。
また、キャピタリズムの競争環境に鍛えらている学生は、個人としての戦闘能力 (生産性) が飛び抜けて高いです。生産性を上げるためのITリテラシーが高く、オンラインでのミーティングを好む。
しかし、コラボレーションに対する忍耐力が低いため、まとめ役の人材が機能しなければ総合力が発揮されにくい。そのためチームアウトプットのアイデアが、生煮えというケースが多く見られました。

個人主義スタイルに関連して、彼らは大袈裟な程に、人を褒める文化があります。人のプレゼンテーションに対して、Awesome、Amazing、I like (素晴らしい・最高・いいね) を連発します。私からすると、なぜそこまで大袈裟に人を褒めちぎるのか不思議に思っていたのですが、 (逆に、素直に受け入れられない私は人間不信という点もありますが.. ) 実際は個人主義のデメリットである弱い繋がりを補完するために、褒める文化があるのだと勝手に理解しています。(人はかくあるべきという美徳もあるのでしょうが、人を褒めるという行為に関しては、私も少しは見習うべきだとは正直思っています。。)

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- 集団主義スタイル:
一緒に働いていると、チームワークを重視するため、一体感を感じます。コンセンサスを作るために、ディスカッションに可能な限り時間をかける。結果的に拘束時間が長くなりがちなため、個人主義スタイルの人は、集団主義スタイルの人とはなるべく組みたがらない傾向があります。(その逆も然り。) 個人としての戦闘能力 (生産性) は高くはないが、柔軟性が高い。オンラインではなく、面着によるアナログミーティングを好む。長期的に、コラボレーションによってアプトプットのクオリティが高まり、チーム全体としての生産性は高いです。

やはり私自身は、集団主義の中で育って来ているので、協調生が高い人とのチームの方が、快適に過ごすことができました。ただ前述の通り、個人主義スタイルの戦闘能力 (生産性) は圧倒的に高く、彼らの技術とスピードは盗まなければならないと感心させられたことも事実です。(*特にプレゼンテーション文化から来るであろう、彼らの作る資料の美しさには驚愕させられるものがあります。)

実は、これら傾向を数字で表している面白いデータがあり、ホフステッド指数と呼ばれるもので
この指数は留学する前から知ってはいましたが、国籍の多様性をより経験してみると、かなり感覚と一致していることが分かり非常に興味深いです。(*日本、欧米とアジアの中間に位置しており、ハイブリッドな傾向があります。またインドと日本は近く、相性が良いのだと思われます。)

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一方で、面白いのが、中国・シンガポール・インドネシアなど、集団主義が強い国です。彼らは逆方向に仲間意識が強く、警戒心が強いため仲間と認めない者を受け入れ難い傾向があります。中国からの留学生たちも、結束がとても強いため、中国人同士でチームを組み行動しているのをよく見かけます。(*韓国は日本と隣人的な感覚があるので、両者間では比較的打ち解けやすいのだと思われます。)
また私は、中国とシンガポールで仕事をしたことがありますが、中国では数多く酒を酌み交わすことで関係性を築くことが可能でした。しかし、一方のシンガポールは都会のイメージがあり、そこまで仲間意識が強いと想定していなかったため、仕事で痛い思いをした経験があります。

最後に、USでの個人主義についてですが、近年では行き過ぎたキャピタリズムに対する疑問視や、デザインによる統合や調和への回帰思想などによって、少しずつではありますがパラダイムに変化が起きているようです。特に、異文化に興味のある好奇心の強い人などは、柔和で協調生が高い気がしています。(その逆のタイプは、トランプが大好きな人たちなのだとか。)
このあたりの社会コンテキストの変化については、別途備忘できればと思います。
(*下写真は、ドイツにある世界遺産のBauhasu校舎、IDのオリジンとなった学校です。)

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