片想い
安眠に注いだ雨はひどく尖った形をしていて、蠍の尾のようにけれどもいやに誘惑的なのでもある
痺れた脳髄はだからおそらく毒によるもので、鼠くらいなら一瞬で死に至らしめるはずなのだが、鼠は死んで私は死なずに痺れている、これこそがエコノミーというやつで、しかし蠍の寵愛のために私が死なずに済んでいるのだとすれば、これはもっぱらポリティクスなのである
蠍の毒に愛が込められていたかは私のあずかり知らないところであるから、けれども私は蠍の愛について考えはじめてしまっているのであって、要するに蠍を含む一切はポリティクスなのだといってもいい
お前はいつまで秘匿されているつもりだと、ある愛の鉱脈が声を掛けられ、とはいえ鉱脈に自ら発掘されようなどという意志はないのだから仕方がない
夜のちょうど半分が過ぎ、夜の半分は仮想的な昼ではないかと主張する愛媛産のみかんは、みずみずしい輝きの上昇曲線が下降曲線に転じるところに自分自身いるのであるから、半分だけでも話を聞いてやってもいいというものだ
半分はいつもおそろしく、ぴたりと動じずこちらの出方をうかがいながら、アルカイックなほほえみを投げかけてくるのだが、いかんせんそれはサブリミナルなものであるからこちらとしても反応のしようがないのである
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