初めての墨染めとろうけつ染めのコレクション

2014年10月

6、7月にブランディングを掘り下げて、8、9月に秋冬の生産を終えて、次の春夏コレクションの製作をしていたのが10月くらいだった。

ブランドは始めたばかりで、コレクションの時期が遅れてしまっていた。

この次のコレクションから通常のペースに合わせられた。

墨染めをする、ろうけつ染めをする、日本古来の美意識を表現するブランド、ということは決まっている、さて、どのようなコレクション展開にしていくか、どんなテーマで毎シーズンやっていくか、どんな見せ方をしていくか、それを考える段階になった。

ロンドン時代から10年計画、10シーズン(アパレルでは春夏一回と秋冬一回で年に2シーズンあるので10シーズンは5年間)計画をしていた。

色々なアイディアを出した。10シーズンで完結するストーリー仕立てのコレクションとか、毎シーズンアート作品を作り、それを落とし込んだコレクションとか

今回考えたのは漢字一文字で毎回のコレクションをやっていこうというアイディア。のちにIROFUSIや会社名のKESIKIなどを見つけるために古語辞典を使うのだが、この時も、古語辞典などから素敵な言葉で漢字一文字のものをありったけ探してメモした。

日本古来の美意識とは、全ては自然からきているものだということを学んでいたので、漢字も自然にまつわるものにしていた。

自然にまつわる話でここで関係ない話をここで挟みたいのだが、ロンドン滞在中にヨーロッパ一周の旅をした。その間にスペインのバルセロナに行ったとき、やはり観に行ったのはガウディ建築だった。

スペインに行く前から、ガウディ建築は好きだったが、現地で見てみると想像を遥かに超えるものがあった。そもそも、事前に調べられる範囲では情報量が圧倒的に少ない。特に細部のディティールなど、実際に見ないと分からない。全部英語の案内板だが、頑張って読んで何とか理解しようとした。

自分がガウディ建築が何よりも好きなのは、唯一無二の、自然からインスパイアされて、自然こそが何よりも美しい、だからそれを表現するという考え方に非常に共感しているからである。もちろん、見た目としての美しさも、圧倒的に世界一だ。

他の記事でも書いたが、誰が何を観るかで、人それぞれまったく感じる事が違う。それは育った国の文化、環境が大きく影響するからだ。

自分は退廃的なもの、古びたものが好きなのだが、それは結局、侘び寂びの美意識から来ている。世界中どこを周っても、自分は生粋の日本人で、日本的なアイデンティティを持っているということが気付かされる。

ガウディ建築からも、西洋の人間至上主義的な感じではなく、自然との調和を感じ取れるのがとても愛おしい所だ。

話を戻すと、コレクションのテーマは漢字一文字で自然にまつわるものにすることにした。

現在まで10シーズンそのやり方を貫いてやってきた。逆順だがこのような具合だ。

2019 S/S 葎 – mugura –

2018 A/W 縒 – fuzoro –

2018 S/S 韻 -hibiki-

2017 A/W 炬 -kagari-

2017 S/S 紗 -usuginu-

2016 A/W 荊 -ibara-

2016 S/S 朧 -oboro-

2015 A/W 凩 -kogarashi-

2015 S/S 雨 -ame-

2014 A/W 柵 -shigarami-


そして今回の話は2回目のコレクション「雨 -ame-」

自分は雨は嫌いではなかった。これは東京に来て、はたまた、ロンドンに行って変わってしまうのだが、自分の地元は晴天率が日本一の地域なので、雨の日が少なかったから、雨が割りと好きだったのかもしれない。

そして今となってはこの監督の名前を出すとただのミーハー扱いされてしまうのがつらい所だが、自分は学生時代、12年前、2008年だったと思うが、新海誠監督の「秒速5センチメートル」を見てそれから自分の中で価値観が変わった。その新海誠監督が出した「言の葉の庭」では雨の日が舞台になっていた。それを観てからというもの、雨の日がより好きになった。

そのころに知ったことなのだが、新海誠は自分と同じ長野県野沢北高校出身だと知って運命というものを勝手に感じてしまった。

ちなみに地元自慢でいうと同じ野沢北高校出身者にはLINE社長の出澤さん、宇宙飛行士の油井さん、その他オリンピックメダリストや、政治家、俳優などを輩出してるらしい。

最初のコレクションテーマ「雨 -ame-」では古語辞典から雨にまつわる古語を探してみると沢山あった。日本人はやはり雨にも情緒深さを感じるのだ。

涙雨、翠雨、雨晴、雨日和、雨隠、傘雨(自分で作った笑)などの雨の名前を作品に落とし込んだコレクションになった。ちなみにこれらのシリーズは半分くらいは定番として今でも店頭に出している。


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